2026216
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【Expert Reaction -専門家コメント-】AI活用の高精度な文献レビュー生成ツール

AI活用の高精度な文献レビュー生成ツール

Nature において、既存の商用大規模言語モデル(LLM:large language models)よりも正確な文献レビューを実現するオープンソース言語モデル「OpenScholar」の実験結果が報告された。OpenScholarはアメリカの研究チームが科学研究に特化して開発した検索拡張生成(RAG)モデルで、4,500万件の論文データストアと自己評価機能を組み合わせて出力精度が高められている。

本研究では、既存のGPT-4oが78〜90%の確率で引用の誤り(ハルシネーション)を生じたのに対し、OpenScholarの引用精度は専門家に匹敵するほど高かった。同時に、研究チームは、文献レビューの自動化を評価するベンチマークツール「ScholarQABench」も開発した。ScholarQABenchは、OpenScholarが生成する回答を、「専門家の回答よりも約50%~70%、有用性が高い」と評価した。

科学文献のレビューは、エビデンス(根拠)にもとづく意思決定の支援、科学プロセスの微調整、および新たな発見の方向付けにおいて重要な役割を果たすが、出版物の増加により、専門家がすべての情報を把握するのは困難になっている。研究チームは、OpenScholarに限界があることを強調した上で、このAIが研究活動の支援や加速につながりうると結論づけている。

論文リンク: https://www.nature.com/articles/s41586-025-10072-4

掲載誌:Nature

掲載日:2月4日


【専門家コメント】

狩野 芳伸 静岡大学グリーン科学技術研究所 教授:

本論文の内容には、大規模かつ他分野にわたる学術的QAのデータベースScholarQABenchと、データベースを用いて事前学習済みモデルであるLlama3.1をファインチューンしたモデルとGPT-4oを組み合わせて作成された、学術タスクに対応するための拡張検索システムOpenScholarの二つが含まれています。

ScholarQABenchはコンピュータ科学、物理学、生物医学、神経科学にわたる3,000の研究質問と250の博士レベルの専門家執筆の回答が含まれています。データやシステムの評価設計は適切かつ十分に行われていると考えます。

システム作成側の視点では、このように作成に多大なコストがかかる高品質かつ大規模なデータベースが公開提供されることは非常に有用です。一方でシステム利用者の視点では、昨今のLLMの急速な発展のため、もはや論文執筆と査読公開のフェーズが追いついていないうえ、個別タスクについての性能は不明であるため、常に自身のタスクで最新モデル・最新手法との性能比較が必要な状況です。

この研究では相当する手法が取り入れられているようですが、現在では標準となった論理的能力を向上できるreasoning機能を備えたモデルとの比較ができていません。OpenScholarが基盤としたオープンモデルLlama3.1やGPT-4oも、現在では一線のモデルとはいえません。OpenScholarが公開されていることは意義があり、利用者の目的と要求性能を満たしていれば利用すればよいですし、さらなる性能を求めるのであれば、各社の商用含め最新モデルとの比較、場合によってはさらにプロンプトチューニングやRAGの調整を試みる必要があると考えます。

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