2026220
各専門家のコメントは、その時点の情報に基づいています。
SMCで扱うトピックには、科学的な論争が継続中の問題も含まれます。
新規データの発表や議論の推移によって、専門家の意見が変化することもありえます。
記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

【NZ SMC:Expert Reaction -専門家コメント-】リチウムイオン電池の正しい廃棄方法

【専門家コメント】

Dr Joseph Nelson (Ngāti Tūwharetoa, Ngāti Raukawa), Research Scientist, Lincoln Agritech; and Associate Investigator, MacDiarmid Institute for Advanced Materials and Nanotechnology:

ー使用済みリチウム電池はどのように処理すべきか
電池の処理方法は基本的に2つ、リサイクルか埋立処分です。望ましいのはリサイクルで、電池には多くの価値ある金属や部品が含まれており、単に埋め立てるのは惜しいものです。ただし現在のリサイクル工程は複雑でエネルギー集約的であり、改善は進んでいるものの、多くの電池廃棄物が依然として埋立地に送られています。

ーなぜリチウム電池火災は危険なのか
リチウム電池には可燃性の高い液体が含まれています。電池外装が破損して液体が漏れると、非常に高温で、場合によっては爆発的な自己持続型の火災が発生し、消火が困難になります。また電池火災では有毒ガスも発生します。これは、電池が不適切に廃棄された場合に予期せず火災に巻き込まれる可能性のある廃棄物処理作業者にとって、重大な安全問題です。

ー1990年代の登場以降、なぜ火災が増えているのか
現代のリチウム電池の基本的な動作原理は、1990年代の初期電池と大きく変わっていません。しかし現在の電池はエネルギー密度がはるかに高く、さらに普及量も非常に増えています。その結果、誤って廃棄される電池の量が増加し、火災も増えています。使い捨て電子タバコや小型電子機器は、この問題を急速に拡大させている要因の一つです。

ーより安全な代替電池はあるか
既存の電池廃棄物への対応と同時に、将来の電池設計についても考える必要があります。理想的な電池とは、設計段階から『安全で持続可能』であり、電池のライフサイクル全体を考慮したものです。


Dr Julie Trafford, Associate Professor for Planetary Health, Auckland University of Technology:

ー使用済みリチウム電池はどのように処理すべきか
使用済みリチウム電池の処理で最も効果的な方法はリサイクルです。リチウム、コバルト、ニッケル、銅、黒鉛などの貴重な材料を回収し再利用できるため、これらの資源が埋立地に廃棄されるのを防ぎ、新たな採掘の必要性も減らすことができます。電池は販売事業者による回収や、専門施設での回収・リサイクルが可能です。 また、水や二酸化炭素を用いた環境負荷の低いリサイクル技術も登場しており、有害廃棄物を減らしつつ金属回収効率を高めることができます。

ーなぜリチウム電池火災は危険なのか
リチウムイオン電池火災は、極めて高温で燃焼し、熱暴走と呼ばれる連鎖反応によって引き起こされるため危険です。電池が過熱すると可燃性ガスを放出し、発火や爆発を起こす可能性があります。これらの火災は自ら酸素を供給するため、一見消火されたように見えても燃焼が継続することがあります。また、有毒ガスや発がん性物質を放出し、環境および健康へのリスクとなります。

ー1990年代の登場以降に分かったこと
不適切な廃棄や火災による長期的な環境・健康影響は、当初考えられていたよりもはるかに大きいことが分かってきました。リチウムイオン電池火災は従来の火災とは挙動が異なり、専門的な管理が必要です。さらに、電池駆動の機器や車両の利用が増えるにつれ、責任あるリサイクルの重要性が高まっています。リチウム、コバルト、ニッケルなどの主要鉱物は供給が限られている一方、現代の電子機器中心のエネルギーシステムに不可欠です。

ーリチウム電池火災が増えている原因
充電中に放置すること、過充電、不適切な充電器の使用、本来想定されていない用途で電池を再利用することなどが過熱を引き起こし、熱暴走につながる可能性があります。 また、家庭ごみや自治体の回収ごみに電池を混入させるなど不適切な廃棄も原因です。電池が圧縮・穿孔・損傷すると、ごみ箱、収集車、リサイクル施設、埋立地などで発火することがあります。低品質のリチウムイオン電池を使用し、誤って廃棄される電子たばこも火災増加の一因となっています。 家庭では電子廃棄物や電池回収拠点を利用するべきです。電池使用量が今後も増え続ける中、安全な充電習慣と適切な廃棄が、火災を減らし、家庭、道路利用者、廃棄物処理施設、そして緊急対応者を守る鍵となります。


Dr Shanghai Wei, Senior Lecturer, Dept of Chemical & Materials Engineering, University of Auckland; and Associate Investigator of MacDiarmid Institute for Advanced Materials and Nanotechnology:

ー使用済みリチウム電池はどのように処理すべきか
理想的には、すべてのリチウム系電池はリサイクルされ再利用されるべきです。リチウムイオン電池にはニッケルやコバルトなどの高価値材料が含まれ、一次(非充電式)リチウム電池には金属リチウムが含まれています。 短期的には、自治体や地域社会が電池廃棄施設への投資と市民教育を強化する必要があります。長期的には、電池メーカーやリチウムイオン電池を内蔵した電子機器メーカーが、回収・リサイクルにより大きな責任を負うべきです。製造から使用、廃棄までを含むクローズドループシステムを採用し、すべての電池にバーコードを付け、廃棄方法や回収場所の情報を読み取れるようにすることが望まれます。

ーなぜリチウム電池火災は危険なのか
リチウムイオン電池火災は、原因、挙動、危険性、消火方法のすべての点で通常の火災とは大きく異なります。化学反応によって自己酸化的に燃焼し、煙の発生から完全な発火まで非常に短時間(多くの場合10秒未満)で進行し、制御が困難です。また燃焼時には強い毒性ガスを放出します。

そのため、廃棄物処理施設やリサイクル施設には専門チームが必要で、消防、リサイクル事業者、電池メーカーと連携して対応すべきです。水、泡、粉末など従来の消火器は十分に効果がなく、専用消火器が必要ですが、その価格は通常の約5倍です。

危険性の主な特徴は以下の4点です。

①熱暴走と呼ばれる化学的連鎖反応による火災で、通常の火災とは本質的に異なる

②燃焼時に有毒かつ可燃性のガスを放出する

③発火までの進行が非常に速く、制御が難しい

④既存の消火手段が十分に効果的でない

例えば、使い捨て電子たばこなどの小型電池は、廃棄物圧縮時に外装が損傷すると熱暴走が引き起こされる可能性があります。

ー1990年代以降に分かったこと
1990年代以降、エネルギー密度、サイクル寿命、出力性能などの性能は大幅に向上し、コストも大幅に低下しました。体積エネルギー密度は約3倍になり、商用化当初と比べコストは約97%低下しています。また、安全リスクや故障メカニズムに関する理解も進み、固体電解質界面(SEI)が寿命や安全性に与える影響、熱暴走メカニズムなどが詳細に研究されてきました。その結果、大型電池の熱管理システム設計も大きく改善され、電気自動車や電力貯蔵用途での利用が可能になっています。 さらに、リチウム、ニッケル、コバルトなどの供給網は地政学的に重要な要素となり、国家戦略にも影響を与えています。

記事のご利用にあたって

マスメディア、ウェブを問わず、科学の問題を社会で議論するために継続して
メディアを利用して活動されているジャーナリストの方、本情報をぜひご利用下さい。
「サイエンス・アラート」「ホット・トピック」のコンセプトに関してはコチラをご覧下さい。

記事の更新や各種SMCからのお知らせをメール配信しています。

サイエンス・メディア・センターでは、このような情報をメールで直接お送りいたします。ご希望の方は、下記リンクからご登録ください。(登録は手動のため、反映に時間がかかります。また、上記下線条件に鑑み、広義の「ジャーナリスト」と考えられない方は、登録をお断りすることもありますが御了承下さい。ただし、今回の緊急時に際しては、このようにサイトでも全ての情報を公開していきます)【メディア関係者データベースへの登録】 http://smc-japan.org/?page_id=588

記事について

○ 私的/商業利用を問わず、記事の引用(二次利用)は自由です。ただし「ジャーナリストが社会に論を問うための情報ソース」であることを尊重してください(アフィリエイト目的の、記事丸ごとの転載などはお控え下さい)。

○ 二次利用の際にクレジットを入れて頂ける場合(任意)は、下記のいずれかの形式でお願いします:
・一般社団法人サイエンス・メディア・センター ・(社)サイエンス・メディア・センター
・(社)SMC  ・SMC-Japan.org

○ この情報は適宜訂正・更新を行います。ウェブで情報を掲載・利用する場合は、読者が最新情報を確認できるようにリンクをお願いします。

お問い合わせ先

○この記事についての問い合わせは「御意見・お問い合わせ」のフォーム、あるいは下記連絡先からお寄せ下さい:
一般社団法人 サイエンス・メディア・センター(日本) Tel/Fax: 03-3202-2514

専門家によるこの記事へのコメント

この記事に関するコメントの募集は現在行っておりません。