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【アルツハイマー】【専門家コメント】ノルウェーにおける、血中タウとアルツハイマー病有病率についての解析:専門家の反応
認知症の主因であるアルツハイマー病における神経病理学的変化(ADNC)の陽性率は不明であった。キングスカレッジ・ロンドンらの研究グループは、57歳以上のノルウェー人1万1,486人の血漿サンプルを用いて、血液バイオマーカーとされる「スレオニン217のリン酸化タウ(p-tau217)」を測定した。その結果、p-tau217の陽性率は加齢とともに増加し、90歳以上では65.2%に達した。70歳以上では、前臨床期・前駆期・認知症期アルツハイマー病において、それぞれ約1割がp-tau217陽性だった。高齢者における陽性率が、従来推定より高いことが示唆された。以下、イギリスの専門家のコメントを紹介する。
Prof Louise Serpell, Emerita Professor of Biochemistry, University of Sussex:
本研究は、アルツハイマー病マーカーであるTau p217を用いており、これは診断分野における比較的新しい進歩です。これにより、ノルウェーのコホートを対象とした解析が可能となり、興味深い点と同時に意外な結果も示されています。
近年、神経変性疾患研究では、特異的診断、疾患の重なり、混合型認知症に関する重要な問題が指摘されています。本研究では、認知症と診断された人の中にTau p217が陰性の人が一定数、存在することが示されており、これは診断の特異性や、このマーカーがどこまで適用可能なのかという重要な疑問を提起しています。本研究では、男女間でTau p217マーカーに有意な差が認められなかったことも示されており、女性の方がアルツハイマー病リスクが高いという一般的な考え方に疑問を投げかけています。これも、今後の研究で解明されるべき重要な点です。
重要な点として、HUNT研究(翻訳者注:ノルウェーで行われている大規模な人口ベースの長期健康調査研究)では、70歳以上の参加者に対して軽度認知障害(MCI)または認知症を診断するための認知機能評価が行われていますが、アルツハイマー病かどうかは明確ではありません。認知症という言葉は曖昧で、アルツハイマー病患者だと言い切れないからです。HUNT研究で使用されたモントリオール認知評価(MoCA)は、一般的な認知機能障害を検出する検査です。
アルツハイマー病は、脳内におけるアミロイドβの沈着(老人斑)と、タウタンパク質による神経原線維変化によって定義されます。ただし、これまでは死後脳の解析によってのみ確定されてきました。早期診断は、アルツハイマー病という限定した神経変性疾患に対して戦略的治療を行うため、ますます重要になっています。
David Thomas, Head of Policy and Public Affairs at Alzheimer’s Research UK:
このような質の高い研究は、アルツハイマー病の血液検査を臨床現場でどのように活用できるかを理解する上で極めて重要です。これらの検査は、早期かつ正確な認知症診断を支援する大きな可能性をもっています。PET検査や脳脊髄液検査といった既存の検査とくらべ、侵襲性が低く、比較的安価で、幅広い分野への発展が期待できます。
しかし、アルツハイマー病に関連するタンパク質が検出されたからといって、それ自体が診断になるわけではありません。こうしたタンパク質をもっていても、生涯にわたって症状を示さない人もいます。したがって、結果の解釈には慎重さが必要です。また、血液検査は高齢者では感度が低下する可能性もあり、今後の研究で、より幅広い年齢層での検証が求められます。
これらの検査をNHSで活用するためには、さらなるエビデンスの蓄積が必要です。私が属するAlzheimer’s Research UKは、READ-OUT研究やADAPT研究など、血液検査に関する研究を他のパートナーとともに支援しています。また、新たな臨床イノベーションを導入できるよう、政府に対して認知症診断を担うNHSサービスへの投資を求めています。
Prof Tara Spires-Jones, Director of the Centre for Discovery Brain Sciences at the University of Edinburgh, Division Lead in the UK Dementia Research Institute, and Past President of the British Neuroscience Association:
本研究は、高齢化に伴いアルツハイマー病の有病率が上昇していることを示すデータを補強する、興味深く重要な研究です。しかし、プレスリリースの見出し『高齢者における認知症は、これまで考えられていたよりも多い』という表現は誇張されています。本研究は、ノルウェーの1万1,000人以上を対象に、年齢層ごとにアルツハイマー病関連バイオマーカーの変化と認知症症状の頻度を調べたものです。その結果、85歳以上の約60%にアルツハイマー病関連のバイオマーカー変化がみられました。これは、2023年に発表された世界的レビューによる55~59%という値と同程度です。本研究では、85~89歳の約25%が認知症と診断されました。一方、2025年のアルツハイマー協会のデータでは、85歳以上の30%超がアルツハイマー病だとされています。したがって、今回の結果は驚くものではありません。
本研究の強みは、集団ベース研究として、ノルウェー人口をよく代表している点、そして信頼性の高い臨床評価と精度の高い血液バイオマーカーを用いている点です。一方で、ノルウェーは比較的遺伝的に均質な集団であり、多様な民族背景を持つ人々が少ない点に限界があります。アルツハイマー病の有病率は、民族によって異なることが知られています。
【論文リンク】https://www.nature.com/articles/s41586-025-09841-y
【掲載誌】Nature
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