【Horizon Scanning Vol. 2026-3】「糖尿病削減が、二酸化炭素排出量の削減につながる」、「前向きな思考(ポジティブ・シンキング)がワクチン効果を高める可能性」

2026年1月23日

【糖尿病】【気候変動】糖尿病削減が、二酸化炭素排出量の削減につながる

糖尿病治療による経済負担を温室効果ガス排出量に換算し、環境影響として評価した結果が報告された。世界の糖尿病患者は2021年時点で5億3700万人に達しており、2045年までに7億8300万人に増加すると予測されている。このモデリング研究では、生活習慣を改善し、高血糖状態(前糖尿病)から2型糖尿病に進行するのを防ぐことで、この疾患の合併症の治療に関連する二酸化炭素排出量を半分以上、削減できることが示された。また、効果的に疾患管理すれば、温室効果ガス排出量を21%削減できるとの試算も示された。

【論文リンク】http://press.psprings.co.uk/Open/january/bmjopen106299.pdf
【掲載誌】BMJ Open
【掲載日時】1月20日 14:30


【AI】【研究者】AIは科学者のキャリア形成を促す一方、科学的探究可能性を狭める

4,100万本以上の科学論文と、多くの著者のキャリアを対象とした新たな分析により、研究におけるAIツールの利用が、キャリア上の成功と関連していることが示された。研究者らは言語モデルを用い、1980年から2025年に自然科学分野で発表された論文のうち、機械学習や生成AIなどのツールを使用しているが、AI手法そのものを主に研究対象とはしていない「AI活用研究」を特定した。その結果、AI活用研究の著者は、論文数が約3倍多く、被引用数は約5倍に達し、キャリアの進展もより速いとわかった。一方、AIを使用していない論文は、より幅広い研究テーマを扱い、相互に引用し合う傾向が強かった。著者らは、AIの利用が、研究者に新しい発想をもたらす方向ではなく、「既知の問題に対して同じ解決策へと収束する」方向へと促している可能性があり、その結果、科学的探究や研究上の関与の幅が狭まっているのではないかと指摘している。

【論文リンク】https://doi.org/10.1038/s41586-025-09922-y
【掲載誌】Nature
【掲載日】2026年1月14日


【自殺リスク】自殺リスク9倍も高い、外傷性損傷の経験者

ノルウェーの研究チームは、外傷性損傷を経験すると、その後に自殺する確率が9倍も高くなると報告した。外傷性損傷を経験した2万5,500人以上について、負傷後2年間の生活状況を調査し、負傷していない約25万人の人々と比較した結果だという。

【論文リンク】https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2843965
【掲載誌】JAMA Network Open
【掲載日】2026年1月16日


【ワクチン】前向きな思考(ポジティブ・シンキング)がワクチン効果を高める可能性

国際研究チームは、プラセボ効果の力でワクチン接種後の抗体産生が増加したと報告。研究者らは、「前向きな思考(ポジティブ・シンキング)が、ワクチンによる免疫反応を高める可能性があるとしている。85人の被験者に前向きな記憶を思い出してもらい、脳の特定領域を活性化させる訓練を施した。その上で、脳画像技術を用いて、動機付けや期待感を制御する領域を活性化する領域を特定した。この領域は、動物による先行研究では、免疫に影響を及ぼしているとの報告があった。訓練を4回行った後、被験者にB型肝炎ワクチンを接種し、その後4週間にわたり血液をモニタリングしたところ、抗体産生が対象群よりも有意に高いことが確認された。研究者らは、前向きな思考で脳をより効果的に活性化することを学んだ人々ほど、血液中の防御抗体が増加する傾向が強いと結論づけている。

【論文リンク(情報解禁後有効)】https://www.scimex.org/newsfeed/positive-thinking-can-boost-the-power-of-vaccines
【掲載誌】Nature Medicine
【掲載日時】1月20日 01:00


【感染症】「人工鼻」を使って、ライノウイルスに対する細胞の感染防御を観察

米国の研究者らは、ありふれた風邪の原因となるライノウイルスに感染した際には、鼻腔粘膜にある複数種の細胞が作用しあうことで、一連の抗ウイルス機構を発動させていると報告した。研究者らは、ヒトの鼻の幹細胞を4週間、培養し、鼻腔を構成する複数種の細胞へと分化させた上で、この「人工鼻」にライノウイルスを感染させ、それぞれの細胞の反応を観察した。すると、軽症で済む場合には、特定の細胞がインターフェロンを放出し、ウイルスが細胞内に侵入したり増殖したりするのを阻止していた。次に、ライノウイルスを認識する細胞のセンサーを阻害する実験を行ったところ、ウイルスが感染して瞬く間に広がり、人工鼻の組織にダメージを与え、死滅させてしまう様子も観察された。このように重症化するのは、鼻水の産生、炎症、呼吸困難を引き起こす、別の細胞システムが発動されるためであることもわかった。研究者らは、軽症ですむか重症になるかは宿主側の反応によるもので、そのメカニズム解明が治療薬開発の有効なターゲットになりうると述べている。

【論文リンク】https://www.cell.com/cell-press-blue/fulltext/S1535-6108(25)00501-X
【掲載誌】Cell Press Blue
【掲載日時】1月20日 01:00


【水資源】国連:世界は「地球規模の水破綻(Water Bankruptcy)の時代」に入ったと発表

国連大学水・環境・保健研究所の新たな報告書によると、世界は「地球規模の水破綻の時代」に突入した。報告書は、多くの流域(basin)や帯水層(aquifer)において、長期的な水使用が再生可能な流入量(renewable inflows)と安全な枯渇限界(depletion limits)を超え、河川・湖沼・帯水層・湿地・土壌・氷河に、現実に完全な再生が望めないほどの被害が生じたことを指摘する。さらに同報告書は、数十億の人が依然として水不安定状態にあり、22億人が安全に管理された飲料水を、35億人が安全に管理された衛生設備を利用できないと述べている。同報告書は、既存のガバナンスと政策課題がもはや目的を果たせず、水破綻に関連する問題に対処するには不十分だと示唆している。本報告書は学術誌Water Resources Managementに掲載予定の査読論文に基づいている。

【報告書リンク】https://unu.edu/inweh/news/world-enters-era-of-global-water-bankruptcy
【掲載誌】Water Resources Management
【掲載日時】1月21日 03:00

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