GWASが炙り出した、「難治性うつ病リスク」と「患者の特徴」との関連
GWAS(ゲノムワイド関連解析)により、難治性の大うつ病性障害(MDD)のハイリスク者を特定できるかもしれないとの研究報告がなされた。本研究では、抗うつ薬の処方データ(リアルワールドデータ)を分析することで、MDDがいくつかのサブグループに分かれることが示され、難治化が「高い喫煙率」、「希死念慮」、「慢性疼痛」といった患者の特徴と有意に関連していると分かった。著者らは、こうした知見が、早期介入や、より細密な治療を実現し、将来的には血液や唾液サンプル由来のマーカーにより治療効果を予測できる可能性もあるとしている。
【論文リンク】https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2844334
【掲載誌】JAMA Psychiatry
【掲載日時】1月29日 01:00
生後2ヶ月で、すでに視覚的な分類ができる可能性
乳児が、これまで考えられていたよりも早い生後2か月の段階で、視覚的に物体をカテゴリー化できる可能性を示す研究報告がなされた。覚醒下の乳児を対象にしたfMRIを用いた研究によるもの。乳児は動物や人工物など複数の画像を見分けることで生物・非生物や大きさを区別でき、それに対応した脳活動が視覚処理経路全体で示されることが分かった。神経表現(脳活動?)は、成人と部分的に類似していた。これらの結果は、視覚認知の基盤が生得的に脳に備わっている可能性を示唆し、乳児期の認知発達に関する理解を再考させるものである。
【論文リンク】https://www.nature.com/articles/s41593-025-02187-8
【掲載誌】Nature Neuroscience
【掲載日時】2026年2月3日(火)1:00
人工の光が、蛾の夜間活動を低下させている
人工夜間照明(街灯やLEDライトなど)が夜行性蛾の夜間活動に及ぼす影響について、研究報告がなされた。3科23種、計843個体を対象に調べたもので、実験により、自然夜間照明と同等の条件下において、一般的な白色LEDライト(10ルクス)や、害が少ないとされるアンバー光でも、蛾の活動量が平均で約85%減少することがわかった。人工光は、種によらず夜間活動を強く抑制し、餌や交尾相手の探索など、短い寿命の中で必要な行動の機会を大幅に失わせる可能性がある。研究者らは、夜行性昆虫にとって夜間の活動時間は生存と繁殖に直結するため、人工光による行動抑制は生態系レベルの影響をもたらす恐れがある、としている。
【論文リンク】https://doi.org/10.1098/rspb.2025.2704
【掲載誌】Proceedings of the Royal Society B
【掲載日時】解禁済
両肺を失った患者、人工肺と肺移植で生存
両肺を失った患者を人工肺システムで48時間生存させ、その後、肺移植に成功させたという事例が報告された。患者は重度の感染症と急性呼吸窮迫症候群(ARDS)により肺が壊死したため、外科チームが両肺を摘出し、胸腔外の人工肺システム(total artificial lung system)で呼吸と循環を一時的に代替した。この装置が、血液を酸素化し二酸化炭素を除去しつつ心臓への血流を維持した。48時間で心臓・腎臓などの機能が回復し、その後、二重肺移植を受けて成功、回復したと報告されている。肺機能を完全に失った患者を救命する、新たな可能性が示されたといえる。
【論文リンク】https://doi.org/10.1016/j.medj.2025.100985
【掲載誌】Med
【掲載日時】解禁済
豪州(専門家コメント):遺伝子がヒトの寿命の約50%を説明しうる
国際研究チームは、ヒトの寿命について、従来考えられていたよりもはるかに遺伝的要因の影響を受けやすい可能性があると報告。数理モデル、ヒトの死亡率シミュレーション、双子データを用いた複数の大規模研究を活用することで、自然死と、その他の死因とのが区別された。その結果、事故や感染症などの外的要因による死亡を考慮すると、遺伝的要因が寿命の約50%を説明しうることが明らかになった。以下は、豪州SMCによる専門家コメント。
専門家コメント
Dr. Jack da Silva:
驚くほど徹底した研究だ。ショウジョウバエなどの実験では、寿命には大きな遺伝的変異(genetic variation)が存在し、一つ一つの遺伝子(single genes)が寿命に非常に大きな影響を与えることは、以前から知られていた。今回の研究は、同じことがヒトにも当てはまることを示している。事故や感染症など、年齢とは関係なく命を奪う要因の影響を考慮した点でも価値がある。
Professor Tony Blakely(the University of Melbourne):
この研究によれば、ヒトの寿命の半分以上は遺伝によるものである。著者らは「遺伝子の関与(heritability, 家系分析などから推定された、遺伝子の関与する割合のこと)は、ある時・ある特定の環境下における、ある特定の集団に適用される統計量(a statistic)であり、重力定数のような固定した量(a fixed quantity)ではない」と警告している。この観点でいうと、彼らの研究は均質な(homogenous, つまり個々人がとても似通っている)集団、具体的にはデンマークとスウェーデンの双子を対象としている。つまり、より多様な集団では、遺伝的要素(hereditary component)は減少する。例えば、出生国や社会経済的地位を問わず、全てのオーストラリア人を対象とすれば、外傷や感染症による死亡を除外しても、寿命における非遺伝的要因の寄与の割合(non-hereditary variation)は大きくなる。
また、過去200年間の長寿化を牽引したのは生活習慣と衛生環境である。我々の遺伝子は、この200年でほとんど変化していないのだ!とはいえ、特定の文脈(時、場所、個人)に生きる人々において、外傷や感染症による死亡を除けば、我々の寿命予測に遺伝的要因が関与すると示された点は有意義だ。同時にこれは当然の結果でもある。我々が致死性疾患(例えば特定のがん)を発症する可能性は、主に遺伝的に決定されるからだ。加齢を制御する遺伝子があり、それが寿命を延ばす治療に結びつくかは、議論の余地がある。
【論文リンク】https://www.science.org/doi/10.1126/science.adz1187;
https://www.scimex.org/newsfeed/expert-reaction-genes-may-explain-about-50-percent-of-the-human-life-span
【掲載誌】Science
【掲載日時】1月29日
世界で最も効果的な気候政策とは?
1990年以降に40カ国を対象とした国際的な政策評価によると、炭素価格設定と課税政策(Carbon pricing and taxation policies)は、世界で採用された排出削減政策の中で最も効果的なものの一つとされる。研究者らは、2022年までに排出削減で最も成功したのは、単一の対策に依存した国ではなく、多様な気候政策を組み合わせた国々であったと指摘する。研究者らは、今後、各国が最大の改善効果を得るために変更すべき点を検討し、オーストラリアが、化石燃料消費税の引き上げによって気候対策の成果を最も向上させる可能性が高い国の一つであると特定した。また、日本については、「カナダ、オーストラリアと同様に、より高い化石燃料税(fossil fuel excise taxes)を導入することで、その努力を大幅に改善できる可能性がある」としている。
【論文リンク】https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14693062.2025.2598684
【掲載誌】Climate Policy
【掲載日時】1月30日
HPVワクチン接種済みなら、子宮頸がん検診の頻度を減らしても大丈夫?
国際的なモデル研究によると、若い頃にHPVワクチンを接種した女性は、子宮頸がん検診の頻度を大幅に減らせる可能性が高いという。オーストラリアでは2007年にHPVワクチンが導入されて以来、子宮頸がん発生率は低下しているものの、25歳以上で5年ごとの子宮頸がん検診の対象となっている。本研究では、同様の検診推奨を行うノルウェーのデータを基に、12~30歳でHPVワクチンを接種した女性に対する検診頻度低減の予測結果をモデル化した。研究者らは、25歳未満で接種済みの場合、15~25年ごとの検診で安全性を維持しつつ、医療費削減と不要な追跡検査(follow-up procedures)を避けることが可能だと結論づけている。
【関連リンク】https://www.scimex.org/newsfeed/could-women-safely-have-fewer-cervical-screenings-in-the-hpv-vaccine-era
【掲載誌】Annals of Internal Medicine
【掲載日時】2月3日 07:00
世界のがんの5分の2は予防可能
国際的な分析により、世界中で発生するがんの約5分の2は予防可能であるとの報告がなされた。この分析では、生活習慣の改善や感染症対策などによって影響を与え得る30のリスク要因が特定された。研究者らは185カ国について2022年の新規がん症例1,870万例を調査し、女性で270万例、男性で430万例が予防可能であったと述べている。これらのがんのほぼ半数は、肺がん、胃がん、子宮頸がんであり、喫煙率の低下やヒトパピローマウイルスなどの感染症対策で対処可能だと指摘。ただし、予防可能ながんの種類は国によって異なり、オーストラリアでは悪性黒色腫が最も多いとも述べている。
【論文リンク】DOI 10.1038/s41591-026-04219-7
【掲載誌】Nature Medicine
【掲載日時】2月4日 1:00
重複医療記録は入院患者死亡リスクを5倍に高める
電子健康記録内で単一の医療記録番号が割り当てられていない患者は、単一の医療記録を持つ患者とくらべて、入院後の死亡リスクが5倍高く、集中治療を必要とするリスクが3倍高いことが明らかになった。この知見を受け、研究者らは患者の安全性を高めるため、データ整合性の改善と医療情報管理における政策変更をよびかけている。研究チームは、2022年7月から2023年6月にかけて、米国の12の提携病院のいずれかに入院した89歳以下の成人患者を対象に、医療記録10万3,190件を調査した。確認された1,698名の重複記録を「傾向スコアマッチング」という統計手法を用いて分析したところ、重複記録のある患者の11%が入院中に死亡したのに対し、重複記録のない患者では2.5%だった。平均入院日数は、重複記録のある患者が101時間に対し、ない患者では74時間だった。集中治療を必要とする確率は3.5倍高く、入院中の死亡率は重複記録のない患者のほぼ5倍であった。
【論文リンク】http://press.psprings.co.uk/qs/january/bmjqs019112.pdf
【掲載誌】BMJ Quality & Safety
【掲載日時】2月4日 8:30
AI活用の、高精度な文献レビュー生成ツール
Natureにおいて、既存の商用大規模言語モデル(LLM:large language models)よりも正確な文献レビューを実現するオープンソース言語モデル「OpenScholar」の実験結果が報告された。OpenScholarはアメリカの研究チームが科学研究に特化して開発した検索拡張生成(RAG)モデルで、4500万件の論文データストアと自己評価機能を組み合わせて出力精度が高められている。本研究では、既存のGPT-4oが78〜90%の確率で引用の誤り(ハルシネーション)を生じたのに対し、OpenScholarの引用精度は専門家に匹敵するほど高かった。同時に、研究チームは、文献レビューの自動化を評価するベンチマークツール「ScholarQABench」も開発した。ScholarQABenchは、OpenScholarが生成する回答を、「専門家の回答よりも約50%~70%、有用性が高い」と評価した。科学文献のレビューは、エビデンス(根拠)にもとづく意思決定の支援、科学プロセスの微調整、および新たな発見の方向付けにおいて重要な役割を果たすが、出版物の増加により、専門家がすべての情報を把握するのは困難になっている。研究チームは、OpenScholarに限界があることを強調した上で、このAIが研究活動の支援や加速につながりうると結論づけている。
【論文リンク】https://www.nature.com/articles/s41586-025-10072-4
【掲載誌】Nature
【掲載日時】2月5日 01:00