2026年3月4日
【SMC News Picks Vol. 2026-8】「喫煙本数を減少させる遺伝子変異」、「単細胞の多細胞化、クローン分裂と細胞集合の組み合わせでも起きうる?」
宇宙最大級の恒星が黄色極超巨星へと移行?
ギリシャの研究者らは、太陽の1,540倍の半径を持ち、最大級の恒星の一つとされる「WOH G64」について、2011年に減光後、一度回復し、2013年から2014年にかけて黄色く・温度の変動幅が1000℃以上になり、2025年には大きく減光したことを報告した。つまり、2013年から2014年の間に赤色超巨星から黄色極超巨星へと移行した可能性があるという。1992年以来の輝度測定値を分析し、電磁スペクトルと組み合わせて得られた結果とのこと。研究者らは、「連星相互作用によって大気を放出したシナリオ」と、「過去の噴火で赤く見えていた黄色極超巨星の噴火が終わって、本来の姿が見えたシナリオ」の二つを提案している。本研究は、相互作用する連星だからこそ、赤色超巨星が極端な大きさで存在し得る可能性を示唆する。赤色超巨星は太陽の8倍以上の質量を持つ星で、超新星爆発までの寿命は100万年から1000万年と短い。恒星の進化過程は不明のままだが、WOH G64の辿る道(超新星爆発、ブラックホールへの崩壊、伴星と合体など)が手掛かりとなるとされる。
論文リンク https://www.nature.com/articles/s41550-026-02789-7
掲載誌 Nature Astronomy
掲載日時 2/24 1:00
穀物による森林破壊は総破壊の11%に及び、世界中に分散している
穀物(米・トウモロコシ・キャッサバ)が、世界の総森林破壊の11%を占めており、従来、森林破壊の抑止において焦点化されてきたココア・コーヒー・ゴムなどを上回るとの報告がなされた。これまで、既存データの地理的限界や土地利用変化の動態の把握不足により、農業への影響は十分理解されておらず、森林破壊のないサプライチェーンや気候目標の進捗が十分、追跡されてこなかった。本研究では、樹幹被覆の衛星データと、179か国・184品目の食料品についてのデータを組み合わせた。その結果、穀物栽培は森林破壊の11%に寄与し、2001年から2022年までの間に1億2,100万ヘクタールの森林を失わせ、41.2ギガトンのCO2を排出していたとわかった。また、穀物による森林破壊は世界中に分散している特徴があった。一方で、放牧地の拡大が森林破壊の42%・炭素排出の52%を占めていたことも明らかになった。本研究は、温室効果ガス排出・吸収目録や規制枠組みの向上を示唆する。
論文リンク https://www.nature.com/articles/s43016-026-01305-4
掲載誌 Nature Food
掲載日時 2/24 1:00
鉄器時代初期の欧州で女性と子どもを狙った集団暴力か?
文化的な多様性が高いパンノニア平原の南部にあるセルビア北部のゴモラヴァ遺跡で、新たに紀元前9世紀の集団墓地が発見され、女性と子どもを狙った計画的な集団暴力の結果ではないかとの報告がなされた。発見されたのは77人の遺骸で、51人(犠牲者の66%)が子ども・青少年。また、犠牲者のうち性別の判定できた72人のうち51人(71%)が女性であった。骨格分析では、多く頭部に与えられた未治癒の損傷や、投射物による傷・防御創がみられた。遺伝子解析では、犠牲者同士は殆ど近縁ではなかった。さらに、同位体分析により、犠牲者は単一の出自ではなく広汎な地域の出自を持つこともわかった。これらの分析結果により、女性と子供を狙った計画的な集団暴力の可能性が示唆されたという。研究者らは、後期ヨーロッパ先史時代における移動や共同体の結びつきと暴力の交差性を知る上で重要である、としている。
論文リンク https://www.nature.com/articles/s41562-025-02399-9
掲載誌 Nature Human Behaviour
掲載日時 2/24 1:00
睡眠時無呼吸症候群による経済損失、米国で年間10兆円規模に
未治療の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、英国と米国の経済に多大な生産性損失をもたらしている可能性がある。英国の研究者らは、2021年の米英の国勢調査回答者(米国3523人、英国840人)を解析し、睡眠中の呼吸停止や週3回以上の強い日中の眠気といった症状をもとにOSAの有病率を推計し、成人の約5人に1人(米国23%、英国19.5%)が該当する可能性がある、と報告した。OSAは睡眠中に喉の筋肉が弛緩し、気道が10秒以上狭窄・閉塞することで呼吸が断続的に止まる疾患。いびきや夜間の覚醒、日中の強い眠気などの症状を引き起こす他、心血管疾患や糖尿病、認知症との関連も指摘されている。研究者らは、18~64歳の就労世代を対象に、欠勤による労働損失と、出勤していても能率が低下する「プレゼンティーイズム」の影響を加味し、経済損失も試算した。その結果、年間の生産性損失は米国で最大約10兆円、英国で最大42億ポンド(GDPの約0.2%)に上ると推計された。労働者1人あたりの年間損失額は、標準治療であるCPAP療法の費用を上回る水準だった。研究者らは、今回の推計は医療費増加や交通・労働災害の影響を含んでおらず、実際の負担はさらに大きい可能性があると指摘している。
論文リンク https://thorax.bmj.com/lookup/doi/10.1136/thorax-2025-223550
掲載誌 Thorax
掲載日時 2026年2月25日(水)午前8時30分
単細胞の多細胞化、クローン分裂と細胞集合の組み合わせでも起きうる?
パスツール研究所の研究者らは、単細胞生物がどのように多細胞化したのかについての新たな進化経路を提唱した。動物に近縁な襟鞭毛虫 Choanoeca flexa は、カリブ海キュラソー島の潮だまりで、水の蒸発と再充填に伴う塩分変動に応じて単細胞の形態と多細胞の形態を行き来する。その動態を解析した結果、研究者らは、多細胞化が、クローン分裂による方法、細胞集合による方法、さらに、その両方を組み合わせた方法の、三つの経路で起こることを突き止めた。従来、前者の2経路は、ほぼ排他的と考えられてきたが、今回の研究により、環境に応じて柔軟に使い分けられた可能性が示された。研究者らは、多細胞化の起源に関する従来の理解を見直す知見だとしている。
論文リンク https://doi.org/10.1038/s41586-026-10137-y
掲載誌 Nature
掲載日時 2/26 1:00
喫煙本数を減少させる遺伝子変異
著者のVeera Rajagopalらは、「メキシコシティ前向き研究(Mexico City Prospective Study)」に参加した3万7,897名の喫煙者のゲノムを解読した。その結果、CHRNB3(β3サブユニットをコードする遺伝子)の変異が、喫煙者の1日当たりの喫煙本数減少と関連しているとわかった。野生型の遺伝子型をもつ人と比較して、この変異遺伝子を1つ、または2つもつ人は、それぞれタバコを吸う本数が約21%、または78%少なかった。この変異は、メキシコ先住民の祖先を持つ人々でより多く見られた。CHRNB3の変異に関連する同様の効果は、UKバイオバンクにおけるヨーロッパ系祖先をもつ約13万人と、バイオバンク・ジャパンにおける東アジア系祖先をもつ約18万人の集団でも確認された。いずれも、CHRNB3の活性に影響を及ぼす遺伝子変異が、多様な祖先集団において喫煙者の1日当たりの喫煙本数を減少させている可能性を示している。
論文リンク https://www.nature.com/articles/s41467-026-68825-2
掲載誌 Nature Communications
掲載日時 2月25日 01:00