Ver.2.1 (Updated: 110319-03:01 JST)
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この内容は、細部を追加したり、最新の情報に書き換えることがあります。
2011年3月11日に発生した、東北地方太平洋沖地震に関し、専門家コメントをお送りします。
信州大学人文学部の辻竜平准教授(@ryuhei_tsuji)は、新潟県中越地震の復興を研究されてきた社会学者です。辻先生が、ご自身の研究にもとづいてツイッター上で発信された内容(http://togetter.com/li/110740)を、先生のご許可を得て、ボランティアとSMCで編集した内容をお届けします。[3/14 13:24更新]
辻竜平(つじ・りゅうへい)准教授
信州大学人文学部社会学研究室
私は中越地震からの復興における、人々の関わり合いを研究してきた社会学者です。以降のコメントは、私の研究成果に基づいています。こんな時に被災者に向けてむち打つようなことを言うなと思われるかもしれませんが、あえて述べさせていただきます。
<被災地在住の方々へ>
いま大切なことは、「必要」と「平等」です。救援物資が届き始めると、自分や家族に少しでも多くの救援物資が欲しいと思われるでしょう。しかし、まずはそれを最も必要としている人に、そして次に、少なくとも平等に分配するようにしてください。
自分の欲求を出し過ぎたり、集落内の関係を悪くしたりするような言葉と行動は極力つつしんでください。いま集落内の関係を悪くしてしまうと、復旧・復興段階で集落内の協力関係がうまくいかなくなります。農村・漁村では、集落内の協力関係なしに復興はありえません。
区長さんやリーダーを中心にまとまった行動をしてください。区長さんが不在の場合は、至急、副区長の方を区長として昇格させるなど、中心となる人を決め、その人のもとに行動をしてください。
<社会ネットワークの見地からの提言>[3/14-13:24追記]
社会的な構造を研究し、問題解決のための糸口を探っている「社会ネットワーク」の研究者としての提言させて下さい。
計画停電は無差別にするのではなく、必要に応じてできないのでしょうか。交通をマヒさせると物資や人の輸送に大きなマイナスになります。関東圏だけのマイナスではありません。交通機関は例外とすることを、電力会社もメディアも、真摯にお考えください。
<被災地在住の方々へ>[3/19-17:33追記]
盗難について
地震発生から数日経つころから,盗難が起こり始めます.私の中越地震の時のインタビューでも言及されたことがありますし,災害研究では一般に知られていることなのですが,略奪や放火といった問題が起こってくるのです(高梨,2007).
例えば,避難所において,知らぬ間にそれまであったはずのものがなくなっている.そして,それが一回だけではなく何度も起こるのです.日中は高齢者など以外は外に出ていきます.その隙を狙って盗難に入る人が多いようです.
避難所にそんなに簡単に見ず知らずの人が出入りできるのかというと,意外に簡単です.救援物資を持ってくる人や行政の人など,ふつうに出入りします.それに紛れて盗難目的の人が入ってくることは難しいことではありません.そういった人が,目についたものをさっと持っていくということは十分にありうるわけです.
もっと手が込んでくると,「ここの避難所の○○さんから,××を持ってくるようにと頼まれた」というようなことを言って,○○さんの居場所を教えてもらい,堂々と物色するという輩もあるそうです.
こういった問題について,どう解決すればよいでしょうか.まず,避難所では,次第に自分の場所(居場所)が定位置として決まってきます.そして,夜はそこに布団を敷き,昼間は布団をたたんで積んでおくというような生活になります.これを利用します.積まれた布団の中で取り出しにくい位置,すなわち,下の方に大事な物は挟んでおくとか,積まれた布団全体を大きなシーツなどで全体を覆っておくようにするのです.物色する側からすれば,さっと目につくものくらいしか盗りにくいからです.いずれにせよ,「よいものを目に付くような場所に置かない」ように工夫してみてください.
また,「ここの避難所の○○さんから,××を持ってくるようにと頼まれた」という形の依頼については,身分証の提示を求めて,しっかりと控えるといったやり方が有効ではないでしょうか.
[以下、2011/3/11更新分]
井出哲(いで・さとし)准教授
東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 固体地球惑星科学大講座
Associate Professor, Solid Earth Science Group, Graduate School of Science, The University of Tokyo
「今回の地震の震源分布は、名古屋大学の橋本千尋准教授ら*が、2009年にGPSデータから見積もった固着領域の評価と一致しています。これは、どれだけの速さで歪みが溜まっているかを示します。この図は、橋本らの研究成果に、今回の地震の震源(青:前震、赤:余震)をプロットしたものです。歪みが溜まってると見積もられていたところに震源が一致していることがわかります。
「これはあくまで、現在手に入る情報から図示した結果であることに注意して下さい。」
*Hashimoto, C., Noda, A., Sagiya, T., and Matsu'ura, M., Interplate seismogenic zones along the Kuril-Japan trench inferred from GPS data inversion, Nature Geoscience, 2, 141-144, 2009.
適切な情報は、社会の問題対応に寄与します。科学的に正確な分析に足るだけの情報が集まりにくい状況ではありますが、流言や誤解を抑制しうる科学的見地からのコメントをお寄せ頂ける研究者の方、いらっしゃいましたらSMCまで情報をお寄せ下さい。私たちにはメディア関係者へのチャンネルがありますので、頂きました情報はメディア関係者に通知いたします。地震学者のみならず、工学者、地質学者、原子力工学者等、専門家の皆様のコメントをお待ちしております。
*メディア関係者の方へ
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日本の穀倉地帯を直撃した今回の震災。政府は安全な食糧を確保するため、被災地から遠い地域の水田、耕作放棄地を代替地として確保し、学徒動員を掛けて米の二期作を実施すべきではないでしょうか。
短粒米の予約生産を外国に依頼することも一策かと思います。
専門家ではありませんが、コメントして良いのでしょうか。
辻竜平さんの提言に賛成です。
被災地の救援物資の分配以外に、現在首都圏での買占めにより発生していると思われるスーパーなどでの品不足も同じだと思います。デフレになるぐらい物が余っていると思うので、本当に必要なものだけを購入していればあれほど品不足にはならないのでは?
計画停電も地域による一律よりは、不要不急の設備から緊急条例でも作ってやっていくべきではないかと思います。
まず、放送局。2~3局に絞ってよいのでは。暫くはどこも情報統制されているような同じニュースしか流していない。停止した各局の取材チームは現地などにもっと入って必要な情報を繋ぐ役を担えるのでは?
ネオンの消灯、今日見ていたら東京タワーなども明るく点灯していた。
各会社も出勤時間や帰宅時間のシフトなどを行い、交通機関の多少の間引きにも対応できるようにするなど。
不要不急の仕事は控えるとか。
何でも一律ではなく、メリハリをつけた対策が必要だと思います。
今回の東北地方太平洋地震が、関東地区にも、今後3日間程度の間に関東大震災が起きる確率が高い、との噂を耳にしました。
気象庁、地震専門家の意見を伺う事は出来ないでしょうか?
東北地方太平洋地震が関東地区に大地震を引起す恐れが高いという事を言う者がいるようです。 この点についての気象庁、あるいは地震専門家の意見を伺う事は出来ませんか?