2014929
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専門家コメント

イグノーベル賞2014の受賞研究について

・これは、2014年9月26日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

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<SMC発サイエンス・アラート>

イグノーベル賞2014の受賞研究について

9月18日に2014年のイグノーベル賞が発表されました。今年で24回目となるイグノーベル賞(Ig Nobel Prize)はノーベル賞のパロディーとして作られたもので、「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に対して贈られるものです。日本人の受賞者も多く、広く知られるようになりました。その結果、イグノーベル賞のコンセプトである「笑える」部分については認知されましたが、後半の「考えさせられる」部分については理解が進まず、メディアの話題にもなりにくい印象があります。

今回、私たちは、イグノーベル賞の「考えさせる」部分を喚起するために、「2014年の受賞研究にどのような意義があるのか」、「受賞研究には、どのような展開や応用が考えられるのか」といった点で、幅広く専門家の方々のコメントを紹介します。


*イグノーベル賞公式ホームページ

http://www.improbable.com/ig/

 

2013年イグノーベル賞受賞者   内山 雅照 助教/新見 正則 准教授

帝京大学 医学部 心臓血管外科学・移植免疫学/同医学部 血管外科学・移植免疫学

『発酵ソーセージを作るためのプロバイオティクススターターとして、乳児の便から分離した乳酸菌を利用した報告に関して』


乳酸菌・ビフィズス菌等のプロバイオティクス細菌は整腸作用、抗菌効果、抗炎症作用、抗うつ作用を持つと報告されています。この研究はソーセージの発酵過程を開始させるための添加物質(スターター)として、いくつかの乳酸菌種を用いれば、健康に良いソーセージが作れるかもしれないという発想に端を発しています。

 

本来、人間の身体には、必要なものは最終的に体内に戻る仕組みが備わっています。例えば、腎臓は糖やアミノ酸を一旦尿中に排泄しますが、腎臓には、それらを体内に戻す「再吸収」という仕組みがあります。方法は異なりますが、一旦体外へ排出されたものから体に良いとされるものを再利用するという観点は科学的には理に適っており、本研究は、何気なく体内で行われている現象を目に見える形で示した点において興味深いと思われます。

 

私たちは近年、健康を保つため、もしくは健康を取り戻すために、運動習慣や食生活を見直し、時には薬やサプリメントを摂取するようになりました。さらに、食べることと治療することが同時に行えるような仕組みとして、例えば、スギ花粉症を軽減させるスギ花粉症緩和米やピロリ菌除菌効果が期待できるヨーグルトまで開発されています。このように、「食べる・飲む」だけで様々な効果を期待できるという点において、この研究の今後の展開としては発酵食品への応用だけでなく、様々な疾患に対する内服治療薬の副作用を軽減するプロバイオティクス細菌を含んだ薬剤の開発までつながるのではないかと思います。

 

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