201142
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SMCで扱うトピックには、科学的な論争が継続中の問題も含まれます。
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記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

食物の放射性物質汚染について:SMCカナダ情報の抜粋

Ver.1.0 (110402-22:00)

この記事はジャーナリスト向けのフリーソースです。東北関東大震災に際し、一般にも公開しています。

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※あくまでコメント時の状況に基づいています。ご注意下さい。

カナダのサイエンス・メディア・センター(SMCC)が、カナダ国内のジャーナリスト向けに発したサイエンス・アラート(SMCC Heads Up)の部分訳をお届けします。以下はカナダの複数科学者の意見をまとめたものです。原文をご希望のかたは、コチラからご覧下さい。

SMCカナダによるジャーナリストへの告知(抜粋)

食物の放射性物質汚染について:日本において

 今後は、穀物と家畜の放射性物質汚染状況の検査が行われる予定です。放射性物質は、環境中の様々な要素に影響を受けながら食物連鎖の中を動いていき、生体中に取り込まれます。植物への放射性物質の取り込みは、その生長期や根の深さ(地面の表層近くに張っている根は、より多くの放射性物質に晒されます)、土の性質や他の要素の影響を受けます。家畜は、屋内で備蓄された飼料を食べている動物は、屋外で放牧されている動物よりも汚染の影響を受けにくいと考えられます。

 一般に、海洋のエコシステム中の生物は、放射性物質が希釈されること、海水では(生体に取り込まれる際に、汚染物質であるセシウム同位体と競合する)ナトリウムの濃度が真水よりも高いことによって、放射性物質を取り込みにくいと考えられます。しかし福島原発周辺から海洋エコシステムに流れ込んでいる放射性物質については、原発からの様々な距離において水質サンプルを採取して検査するとともに、食物連鎖の様々な階層の生物についても検査を行う必要があります。

 放射性物質の環境影響には、物理学的半減期と生物学的半減期の両方が重要です。物理学的半減期とは、ある時点の放射性物質の放射線量が、半分になるまでの時間です。いっぽう生物学的半減期とは、物理学的半減期による減衰に加え、体外への排出の作用などで最初の放射線量が半分になるまでの時間です。

 たとえば、セシウム137の付着したコケを食べたトナカイの、セシウムの筋肉中への取り込みを調べた研究があります。セシウム137の物理学的半減期は約30年ですが、この研究から得られた生物学的半減期は約2週間でした。

食物の放射性物質汚染について:カナダにおいて

 (現在)カナダにおいて成育した穀物や食肉の汚染状況はあらゆる安全基準をクリアしており、健康に影響が及ぶものではありません。全てのカナダの食材は、日本から輸入されるものを含め、カナダ食品検査庁の規定ルーチンにそって放射性物質汚染をチェックしています。この安全基準はコチラ(英語)から確認できます。

 

日本への渡航は安全ですか?(2011年4月1日現在)

 WHO, IAEA, IMO, そしてICAはいずれも津波による災害を受けた地域を除き、日本に対する渡航は安全であると布告しています。

 カナダ外務国際貿易省(FAIT)は、福島原発の80km圏内への旅行に際して警告(英語)を喚起しています。同時にこの勧告は、3月11日の地震及びそれに続く津波の被害を受けた東京及び本州北部地域への不要不急の渡航は自粛するように呼びかけています。

 

 

What about radiation in food?

In Japan: Crops and livestock will be monitored for radioactive nuclides. Radioactive nuclides move through the food chain according to various transfer factors – the amount of radioactive nuclides that enter into an organism from the environment. For plants, this depends on growth stage, root depth (shallow roots will have higher exposure) soil characteristics and other factors. For livestock, indoor animals eating stored feed take up less radionuclide than outdoor grazers. In general, organisms in oceanic ecosystems show less uptake because of dilution, and also because potassium concentration in the ocean is higher than in freshwater, competing with cesium isotopes for uptake.

As radioactive nuclides enter the ocean ecosystem around the plant, monitoring should take place at various distances from the plant and involve water samples as well as monitoring of organisms from all levels of the food chain.

Both the physical half-life and the biological half-life are important in monitoring radionuclides in the environment. The physical half-life is how long it takes for half the original sample of the radioactive substance to decay; the biological half-life is how long it takes an organism to get rid of half the material it has taken up, through decay or excretion.

An example is the uptake of cesium-137 in reindeer muscles after eating contaminated lichen. Cesium-137 has a physical half-life of about 30 years but a biological half-life of about two weeks.

In Canada: For meat or crops grown in Canada, any contamination from within Canada is well below any levels that could affect health. All Canadian food, including imports from Japan, is routinely inspected for radioactive contamination by the Canada Food Inspection Agency.Radioactive contamination safe limits in Canada can be found here.

 

Is it safe to travel to Japan? (Updated to April 1, 2011)

The World Health Organization, the International Atomic Energy Association, the International Maritime Organization, and the International Civil Aviation organization have jointly stated that, excluding the areas damaged by the tsunami, travel to Japan is safe for international visitors.

The Department of Foreign Affairs and International Trade in Canada has issued travel warnings for areas within 80 kilometres of the Fukushima nuclear plant. It also advises against non-essential travel to Tokyo, its surrounding areas and northern Honshu due to damages caused by the March 11 earthquake and subsequent tsunamis.

 

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専門家によるこの記事へのコメント

  1. 七誌

    日本国産の作物を摂取するには、あまりにも情報が錯綜し、同時に判断材料が少ないと感じています。
    この際先を見据えた上で危険か否かというハッキリとした発表をして頂きたいと思うのですが、なぜ政府は我々国民の自主判断に任せるような曖昧な発表ばかりするのでしょうか。

  2. S

    福島市在住の者です
    祖父がもう野菜の種をまいているのですが、これから育つ野菜に放射性物質が濃縮される危険性はあるのでしょうか?

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