海外専門家コメント
気候変動と人間活動や金融危機の関連について
Ver.1.0 (111216-01:10)
・これは、2011年12月7日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<SMC発サイエンス・アラート>
気候変動と人間活動や金融危機の関連について:専門家コメント
12月4日に英国科学専門誌「Nature Climate Change」と「Nature Geoscience」において、2つの気候変動に関する論文が発表されました。これらの論文:「二酸化炭素排出量の増加は金融危機の後に観測される」と「地球温暖化における人為的活動の影響証拠」について、専門家のコメントをお伝えします。
※精確さよりも早さを優先して翻訳しております。原文を添付致しましたので、必要であれば自由に翻訳し直してご利用下さい。
原著論文:
Glen P. Peters, Gregg Marland, Corinne Le Quéré, Thomas Boden, Josep G. Canadell, and Michael R. Raupach. "Rapid growth in CO2 emissions after the 2008–2009 global financial crisis" Nature Climate Change, December 04, 2011 【リンク】Abstract無料・本文有料(要契約)
Markus Huber and Reto Knutti. "Anthropogenic and natural warming inferred from changes in Earth’s energy balance" Nature Geoscience, December 04, 2011 【リンク】Abstract無料・本文有料(要契約)
クリス・ラプリー教授(Chris Rapley)
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 環境サイエンス
– 両方の論文について
この二つの研究は、厳しいメッセージを伝えています。人間の活動が原因の二酸化炭素の排出は、確かに私たちが依存とする気候系を乱しています。現在の不況の中で政府、企業や個々人がその量を削減しようとする努力に関わらず、二酸化炭素の排出量が増え続けています。
気候への影響はすでに出てきており、時間とともに大きくなって取り返しがつかなくなります。排出量を本当に削減するためには、新たに断固たる行動を取る必要があります。ダーバンで行われる気候変動交渉に集まる世界のリーダーたちはすでに状況を把握しています。彼らが自らの責任に対して一貫性のある行動を実行するチャンスも目の前にあります。私たちができることは、彼らがその難局に立ち向かうことを期待するだけです。
【コメント原文】
These two new results offer a stark message. Human carbon emissions are certainly disturbing the climate system upon which we depend, and in spite of the economic slowdown, and despite all the efforts by governments, businesses and people to reduce them, our emissions are reaching new highs.
The climatic consequences, already emerging, will grow over time, and are irreversible. A new level of decisive action is required now to achieve real emissions reductions. World leaders at the climate negotiations at Durban know the score; the opportunity to act consistent with their responsibilities and rank lies before them. We can only hope that they rise to the challenge.
ジュリア・スタインバーガー博士(Julia Steinberger)
英国・リーズ大学講師 エコロジー経済学 サステナビリティ研究所
– Nature Climate Change誌で連載された「二酸化炭素の排出量の増加と金融危機の関係」について
過去数十年間の最悪の経済危機の二酸化炭素排出への影響は小さいものでした。2009年には、世界で最も豊かな国々の排出量が一時的に低下し、成長著しい国ではほとんど変化がありませんでした。今回の研究結果はあまりにもショッキングで、世界中に警鐘を鳴らすものです。経済危機は、21世紀にふさわしい、二酸化炭素排出の少ないインフラに投資する機会だったはずです。それなのに、私たちはあらゆる意味で不利な状況を招いてしまいました。これまでにない炭素量排出の増加があり、それとともに失業の増加、エネルギーコストや所得格差も拡大しています。エコな経済への移行がこれほどまで求められた時代はないでしょう。
【コメント原文】
The worst economic crisis in decades was apparently a mere hiccup in terms of carbon emissions: a temporary drop for the richest countries in 2009, and hardly perceived by emerging economies. These findings are truly shocking, and constitute a global wake-up call. The economic crisis should have been an opportunity to invest in low-carbon infrastructure for the 21st century. Instead, we fostered a lose-lose situation: carbon emissions rocketing to unprecedented levels, alongside increases in joblessness, energy costs and income disparities. Surely the transition to a green economy has never seemed more appealing.
デヴィッド・レイ博士(David Reay)
英国・エディンバラ大学 助教(Senior Lecturer) 炭素マネジメント
– Nature Climate Change誌で連載された「二酸化炭素の排出量の増加と金融危機の関係」について
金融危機のある意味で「良い影響」と言える側面は、温室効果ガス排出量の低下でした。しかし、今回の論文を見る限り、それは一時的なものでした。2010年のわずかな景気回復だけでも、排出量の多い道へ戻ってしまったようです。現在、問題は3つ存在します。考えがまとまらない世界のリーダーたち、二酸化炭素ファイナンスの少なさ、そして危機的な気候変動を避けるチャンスが急速に狭まっていることです。ダーバンの気候変動会議で成果を求める人たちに取っては、ハードルがより高くなったと思います。
【コメント原文】
One tarnished silver lining of the global financial crisis was that it brought about a drop in greenhouse gas emissions. From this latest study we see that the drop was all too ephemeral and even the limp economic recovery of 2010 has put us back on a high emissions trajectory. We now face the triple whammy of distracted world leaders, a scarcity of carbon finance, and a fast-closing window of opportunity to avoid dangerous climate change. For those striving for a breakthrough at the climate change conference in Durban, things just got even harder.
ピエス・フォースター教授(Piers Forster)
英国・リーズ大学 気候変動
– Nature Geoscience誌で連載された「地球温暖化における人為的活動の影響証拠」について
これはなかなか説得力のある研究です。物理学的なエネルギー保存則と観測結果は、温室効果ガスが温暖化の原因であり、他のシナリオは自然法則に反していると述べています。これまでの証明では複雑な気候モデルが使われてきましたが、この論文ではそのようなモデルは使っていません。土壌・海・大気ガスの変化を注意深く観察しているだけです。
【コメント原文】
It’s pretty convincing stuff: observations and the physical law of energy conversation have been used to show greenhouse gases are responsible for global warming and that alternative scenarios violate this law of nature. Previous proofs have relied on complex climate models, but this proof doesn’t need such models – just careful observations of the land, ocean and atmospheric gases.
ピーター・ストット博士(Peter Stott)
「気候監視と特定部」リーダー, イギリス気象庁ハドレーセンター
– Nature Geoscience誌で連載された「地球温暖化における人為的活動の影響証拠」について
本研究は、(従来の研究とは)別のアプローチを使用しているにも関わらず、過去50年間で観測された温暖化は人間活動で作られた温室効果ガスのせいだと改めて証明しています。(コメント者ら)イギリス気象庁ハドレーセンターや他の研究グループからも同じような研究結果が出ており、今回の論文は、これまで観測された温度上昇は人間の活動が原因だと示す、さらなる証拠になっています。
【コメント原文】
This study confirms that, even when using different approaches, the observed warming seen over the last 50 years is dominated by man-made emissions of greenhouse gases. With similar results from the Met Office Hadley Centre and other researchers elsewhere this is further proof that the observed temperature rise we have seen can be attributed to human activity.
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