2012329
各専門家のコメントは、その時点の情報に基づいています。
SMCで扱うトピックには、科学的な論争が継続中の問題も含まれます。
新規データの発表や議論の推移によって、専門家の意見が変化することもありえます。
記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

ジョナサン・ハル博士

水素を貯蔵可能とする触媒開発について

Ver.1.0 (120327-14:00)

・これは、2012年3月23日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

 

<SMC発サイエンス・アラート>

水素を貯蔵可能とする触媒開発について:専門家コメント

 二酸化炭素と水素を貯蔵可能なエネルギーとして可逆的に利用することができる触媒についての論文がネイチャーに発表されました。この研究について、米国の専門家のコメントを紹介します。

※正確さよりも早さを優先して翻訳しております。原文を添付致しましたので、必要であれば訳し直してご利用下さい。

原著論文:
Hull, J.F., Himeda, Y., Wang, W., Hashiguchi, B., Periana, R., Szalda, D.J., Muckerman, J.T., and Fujita, E. (2012) "Reversible hydrogen storage using CO2 and a proton-switchable iridium catalyst in aqueous media under mild temperatures and pressures" Nature Chemistry doi:10.1038/nchem.1295【リンク

 

ジョナサン・ハル博士
(Dr Jonathan Hull)

米国・ブルックヘーバン国立研究所 化学部 ゴールドヘーバ・フェロー
Goldhaber Fellow, Chemistry Department, Brookhaven National Laboratory, Upton NY

 私の研究所のミッションは、水、二酸化炭素や太陽光のような再生可能な資源を利用して、新しい燃料を開発することです。その研究の目的のひとつは水と太陽光を使って水素を得ることですが、今回の研究は私たちの他の研究、二酸化炭素を有用なエネルギーに変える試みに関することです。今回の論文は二酸化炭素を利用する一つの方法を紹介したもので、二酸化炭素を水素を運ぶ「担体」として使用した触媒の開発を報告します。

 今回の研究の重要な点は2つあります。まず、非常に不活性な分子である二酸化炭素を有用な化学物資であるギ酸に変えることができました。ギ酸はさまざまな産業利用が可能なうえに、燃料としても利用できます。その他には、水素を液体化して、その後に元に戻す方法も見つけました。これはとても重要なポイントです。なぜならば、水素は天然ガスや水から得られるクリーン・エネルギーとして知られていますが、非常に軽いガスのため、保管や輸送には大変な困難があるからです。水素を液体に変えればガソリンや石油のような通常の燃料として扱えます。水素を貯蔵できる形に変え、またもとに戻す方法を実証したのは私たちが初めてではありませんが、私たちは水という単一の媒体中で両方の反応を行うことに始めて成功しました。この手法の大きな利点は、水のpHを調整するだけで、触媒が水素を生成するか貯蔵するかをコントロールすることができる点です。

【コメント原文】

 Our lab’s mission is to develop fuels from renewable sources using water, carbon dioxide and sunlight. Part of our research is aimed at obtaining hydrogen from water using sunlight. The other part of our research, and the present work falls into this category, is converting CO2 into a useful energy source. This particular study shows one way of utilizing CO2, and reports the development of a catalyst to use CO2 as a hydrogen 'carrier'. Our research is significant in two important ways: first of all we have a way of converting CO2, a very inert molecule, into a useful chemical, formic acid, which has many industrial applications, and may also be used as a fuel. Secondly, we have also demonstrated a way to put hydrogen into a liquid, and then get it back later, so to speak. This is important, since hydrogen is a very clean fuel that can be derived from natural gas or water, but it’s very difficult to store or transport because it is a very light gas. Turning it into a liquid allows hydrogen to behave more like conventional fuels such as gasoline or oil. We are not the first to demonstrate hydrogen storage and recovery this way. However, ours is the first to do both reactions in a single medium, water. A great advantage of this is that we can control whether our catalyst stores or produces hydrogen simply by adjusting the pH of the water.

 

 

 

記事のご利用にあたって

マスメディア、ウェブを問わず、科学の問題を社会で議論するために継続して
メディアを利用して活動されているジャーナリストの方、本情報をぜひご利用下さい。
「サイエンス・アラート」「ホット・トピック」のコンセプトに関してはコチラをご覧下さい。

記事の更新や各種SMCからのお知らせをメール配信しています。

サイエンス・メディア・センターでは、このような情報をメールで直接お送りいたします。ご希望の方は、下記リンクからご登録ください。(登録は手動のため、反映に時間がかかります。また、上記下線条件に鑑み、広義の「ジャーナリスト」と考えられない方は、登録をお断りすることもありますが御了承下さい。ただし、今回の緊急時に際しては、このようにサイトでも全ての情報を公開していきます)【メディア関係者データベースへの登録】 http://smc-japan.org/?page_id=588

記事について

○ 私的/商業利用を問わず、記事の引用(二次利用)は自由です。ただし「ジャーナリストが社会に論を問うための情報ソース」であることを尊重してください(アフィリエイト目的の、記事丸ごとの転載などはお控え下さい)。

○ 二次利用の際にクレジットを入れて頂ける場合(任意)は、下記のいずれかの形式でお願いします:
・一般社団法人サイエンス・メディア・センター ・(社)サイエンス・メディア・センター
・(社)SMC  ・SMC-Japan.org

○ この情報は適宜訂正・更新を行います。ウェブで情報を掲載・利用する場合は、読者が最新情報を確認できるようにリンクをお願いします。

お問い合わせ先

○この記事についての問い合わせは「御意見・お問い合わせ」のフォーム、あるいは下記連絡先からお寄せ下さい:
一般社団法人 サイエンス・メディア・センター(日本) Tel/Fax: 03-3202-2514

専門家によるこの記事へのコメント

この記事に関するコメントの募集は現在行っておりません。