2012927
各専門家のコメントは、その時点の情報に基づいています。
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専門家コメント

遺伝子組み換え作物と除草剤のラットへの影響について

 

Ver.1.1 (120920-12:00)

・これは、2012年9月20日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

・このサイエンス・アラートは豪日交流基金(Australia-Japan Foundation)からの支援をいただき、作成されたものです。

<SMC発サイエンス・アラート>

遺伝子組み換え作物と除草剤のラットへの影響:専門家コメント

フランスの研究チームは、実験用ラットに遺伝子組み換えトウモロコシとRoundupと呼ばれる除草剤を食べさせたところ、対照群に比べると腫瘍の増殖と多臓器障害になるリスクが高かったことを発見。論文は9月19日にフード・アンド・ケミカル・トクソコロジーに掲載。

原著論文:

Seralini et al. (2012) Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize. Food and Chemical Toxicology.
Food and Chemical Toxicology当該論文へのリンク
 

デイビッド・シュピーゲルホルター教授(Professor David Spiegelhalter)

英国・ケンブリッジ大学 数学科学科 教授
Winton Professor of the Public Understanding Of Risk, University of Cambridge

* シュピーゲルホルター教授は市民に対するリスク・コミュニケーションの専門家です。

 私の考えでは、今回の調査の方法・統計・結果の報告は同じような調査の基準に達していません。正直に言いますと、この調査が掲載となったことに驚いています。

 全てのラットは、未治療群の健康状態と比較されていますが、対照群ラットの数は両性10匹(合計20匹)であり、このほとんどにも腫瘍ができました。一見除草剤の実験用に使われたラットと比べると、健康だったように見えますが、正しい統計分析が無く、数字も小さいので実質的な証拠にはならないと思います。また、遺伝子組み換えトウモロコシと除草剤を与えられていた雄のラットもそこそこ健康でした。この結果は再現性があると証明できるまでは、私は懐疑的です

【コメント原文】

"In my opinion, the methods, stats and reporting of results are all well below the standard I would expect in a rigorous study – to be honest I am surprised it was accepted for publication.

All the comparisons are made with the ‘untreated’ control group, which only comprised 10 rats of each sex, the majority of which also developed tumours. Superficially they appear to have performed better than most of the treated groups (although the highest dose GMO and Roundup male groups also fared well), but there is no proper statistical analysis, and the numbers are so low they do not amount to substantial evidence. I would be unwilling to accept these results unless they were replicated properly."

 

オットリン・レイサー教授(Professor Ottoline Leyser)

英国・ケンブリッジ大学 セインズバリー研究所 副所長 
Associate Director of the Sainsbury Laboratory, University of Cambridge

 多くの遺伝子組み換えの議論と同様、今回の調査も遺伝子組み換えとはほとんど無関係です。論文の著者は遺伝子組み換えが変化の原因だと言っていません。今回の調査は、Roundupと呼ばれている除草剤の影響と、除草剤に強いトウモロコシを作るためにトウモロコシに導入された酵素の影響を説明しています。遺伝子組み換え技術を利用して遺伝子を作物に導入することは、伝統的な植物育種の方法を利用するより、遺伝子の変化が少ないことを示す有効な証拠が示されています。

 残念なことに、このことは現状の議論に対しては、些細なポイントで、ほとんど関係がありません。

【コメント原文】

"Like most of the GM debate, this work has very little to do with GM. The authors of the paper do not suggest that the effects are caused by genetic modification. They describe effects of the roundup herbicide itself and effects that they attribute to the activity of the enzyme introduced into the roundup resistant maize. There is good evidence that introducing genes in to crops using GM techniques results in fewer changes to the crops than introducing them using conventional breeding.

This is unfortunately rather a subtle point and is somewhat tangential to the immediate issue."

 

トム・サンダーズ教授(Professor Tom Sanders)

キングス・カレッジ・ロンドン 栄養科学研究課 部長
Head of the Nutritional Sciences Research Division, King’s College London

 今回の論文を拝見すると、ラマツィーニ財団の研究を思い出します。また、同じ問題を思い出させます。

 多くの毒性試験は(実験用ラットの)寿命に伴って、つまり2年間で終了してしまいます。永遠に終わらない代替試験は存在しません。

 どのような食物摂取を摂取したののかと発育についてのデータが書かれていません。今回の研究に利用されたラット株は、元から食事量が制限されていないと乳腺腫瘍が発生しやすいラットです。

 また実験に使われた食品の構成についての情報がありません。一つ心配されるのは、保管が不適切でトウモロコシの中にマイコトキシンが含まれていたのではないかということです。ゼアララノンは、トウモロコシに生えてくる糸状菌が作る植物エストロゲンとしてよく知られています。

 通常とは異なる統計的手法が用いられ、確率の計算を使って多重比較ができるように調整されていないことも問題です。明快なデータ解析の計画がないのは、著者たちが統計的な罠にはまっているのかもしれません。

【コメント原文】

"This is reminiscent of work by the Ramazzini Institute and suffers from many of the same problems.

Most toxicology studies are terminated at normal lifespan i.e. 2 years. Immortality is not an alternative.

No food intake data is provided or growth data. This strain of rat is very prone to mammary tumours particularly when food intake is not restricted.

There is a lack of information on the composition of the diet. One concern is whether there were mycotoxins in the maize meal because of improper storage. Zearalanone is a well know phytoestrogen produced by filamentous fungi that grow on maize.

The statistical methods are unconventional and probabilities are not adjusted for multiple comparisons. There is no clearly defined data analysis plan and it would appear the authors have gone on a statistical fishing trip."

 

マーク・テスター(Mark Tester)

豪州・アデレード大学 オーストラリア植物機能ゲノム科学センター 研究教授
Research Professor, Australian Centre for Plant Functional Genomics, University of Adelaide

 パッと思いつく事は、長年GMフーズを販売してきた国の研究者からはなぜ、このような疫学調査は出ていないのか?ということです。 もし、この論文に書かれているGMフーズの影響の大きさが本当であり、もし、人間にも影響があるとすれば、大勢の北米人がすでに犠牲になっているはずです。

 遺伝子組み換え食品はもう10年以上前から販売されていますが、それとは関係なく寿命は伸びています。

 また、今回の研究の影響が事実であれば、なぜ、評判の高い研究者たちによって行われ、これまで大手ジャーナルに掲載された多くの研究で、そのことが指摘されなかったのでしょうか?

 論文の主要な2つの図(Fig 1とFig 2)には対照群が見当たりません。これは信じられないことです。両方の図において、年老いたラットに腫瘍ができて死んだことが表されています。なぜ、比較できるように対照群のデータを一緒に発表しなかったのでしょうか。おまけに両方の図において、標準誤差と表しているデータが平均値になっています。

 最後に注目して欲しい点は、この研究は一つの出来事と一つの遺伝子に関する調査です。この結果が全ての遺伝子組み換え作物にあてはまると推定するのは不条理です。今回の調査結果、一つの遺伝子についての影響が仮に真実だと確認されたとしても、他の遺伝子組み換え作物に導入された遺伝子が同じ影響を及ぼすと結論づけることでできません。遺伝子組み換えは、この惑星で、どの時代においても自然におきてきたことです。ただの技術にすぎません。その技術をどう使うのかが重要です。技術それ自体についてのリスクを一般化して話すのは馬鹿げています。

【コメント原文】

"The first thing that leaps to my mind is why has nothing emerged from epidemiological studies in the countries where so much GM has been in the food chain for so long? If the effects are as big as purported, and if the work really is relevant to humans, why aren’t the North Americans dropping like flies?! GM has been in the food chain for over a decade over there – and longevity continues to increase inexorably!

And if the effects are as big as claimed, why have none of the previous 100+ plus studies by reputable scientists, in refereed journals, noticed anything at all?

The two main Figures in the paper (Fig 1 and Fig 2) do not contain controls. It is unbelievable. They show that old rats get tumours and die – that is all that can be concluded from those two Figures. Why do they not present the control data in the same way, but instead present it within each figure as a mean =/- SEM?

Finally, of course, this was a study of one event with one gene. To then extrapolate to all genetically modified crops is absurd. Even if it eventuates that there is an issue with this one event, or even this one gene, there is no reason at all for other genes introduced using GM to carry the same burden of risk. GM is an adaptation of a natural process that occurs all the time all over the planet – it is “only” a technology, a technique. It is how it is used that is more important. Generalisations about the risk of the technology per se are absurd."

 

 

タグ: 生物多様性, 遺伝子組み換え, 食品安全

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