海外専門家コメント
自閉症スペクトラムのコストに関する研究成果
Ver.1.0 (140718-18:00)
・これは、2014年6月13日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<SMC発サイエンス・アラート>
自閉症スペクトラムのコストに関する研究成果:海外専門家コメント
自閉症スペクトラム患者への支援は一生で、知的障害がある場合には障害で約240万ドル、知的障害がない場合には約140万ドルかかるという研究結果が6月9日、JAMA Pediatricsに掲載された。研究はアメリカ合衆国とイギリスを対象としたもの。これまで考えられていた金額よりも高額であり、患者や家族への支援は急を要するとのこと。
論文URL: http://archpedi.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1879723
参考URL: http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
自閉症スペクトラム(自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害)について(厚生労働省より)
サイモン・ウォレス博士(Dr. Simon Wallace)
Research Director, Autistica
Autistica 研究部長
自閉症スペクトラムは生涯つきあっていかなくてはならない病であり、自立した生活や就職への壁は高い。他の病気と比べて経済的な負担が大きいのもそのためである。
これほどのコストに対して、関連した研究に投じられている予算は驚く程少ない。
研究することで克服できる点も多いのだが、ケアと研究の予算投入は現在100万:180の比率になっている。現在のサービスはエビデンス抜きで行われているのだ。
【コメント原文】
“We care about the human stories behind these numbers. Autism is life long and accessing independent living and employment can be hugely challenging. This is part of why the figures published show a greater economic impact in autism than other conditions. There is an unacceptable imbalance between these costs and the amount we spend each year on researching how to fundamentally improve the outlook for people. We know that progress is possible. The right research would provide early interventions, better mental health, and more independence. But right now we spend just £180 on research for every £1 million we spend on care and services. So as a nation we’re designing services in the absence of evidence, and we not doing enough to invest in the scientific breakthroughs that could result in a step change in people’s lives.”
デクラン・マーフィー教授(Professor Declan Murphy)
Head of Department of Forensic and Neurodevelopmental Sciences at King’s College London’s Institute of Psychiatry
キングスカレッジ精神医学研究所 法医学・神経発達学部門 部門長
この研究結果は、家族や友人に自閉症の人間がいるかどうかに関わらず、自閉症が社会全体に影響を及ぼしていることを示している。 より多額の研究投資をすることで、状況を変えられるかもしれない。
【コメント原文】
“These cost figures show that autism affects all of us in society, every day, regardless of whether or not we have a family member or friend with autism. So we all need to play a part in making things better. More research funding would mean that we could conduct studies to transform lives.”
エミリー・シモノフ教授(Professor Emily Simonoff)
Professor of Child and Adolescent Psychiatry at King’s College London’s Institute of Psychiatry
キングスカレッジ精神医学研究所 児童・青春期精神医学
過去の研究ではイギリスにおける自閉症スペクトラムのコストは280億ポンドだという結果が出ている。今回の研究はこの結果を裏付けるものだ。
今回の研究からわかる負担の大きさに比べ、精神医学への予算投資はあまり少ない。
自閉症は生涯続くものであるため、教育や家族への支援等様々な分野で今以上の援助が必要なことがこの結果から伺える。
【コメント原文】
“This is an extension of Martin Knapp’s previous work, which was from the UK only, indicating the costs of autism to be more than £28 billion per year (Knapp, M., et al. (2009). ‘Economic cost of autism in the UK.’ Autism 13(3): 317-336). Hence, the present study extends and confirms the previous findings, rather than highlighting an area of unexpected new knowledge. Nevertheless, it is an important finding because of the relatively low amounts of research funding that go to mental health, despite its huge burden.
The previous study was startling in its findings and the present work is important in confirming the high level of cost associated with autism. Unlike many medical conditions, autism is a lifelong disorder in which people require additional support in many areas, including education, participation in family life and community activities and, later on, in work (for some who have less global cognitive impairment) and other meaningful activities of daily living.”
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