20141015
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海外専門家コメント

レゴ社がシェル石油とのパートナー契約を解消した件について:海外の専門家コメント

・これは、2014年10月13日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

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<SMC発サイエンス・アラート>

レゴ社がシェル石油とのパートナー契約を解消した件について:海外の専門家コメント

10月8日、レゴ社はシェルとの販売促進提携契約を今後は更新しないと発表しました。この件につき、英SMC発の専門家コメントをお送りします。

翻訳は迅速さを優先しております。ご利用の際には必ず原文をご確認ください。

 

 

Dr Simon Lewis

Reader in Global Change Science, University College London President, Society for General Microbiology

気候変動に拍車をかけないためには、現在、埋蔵されていることがわかっている化石燃料は採掘せず、そのまま残しておくのがよいと思います。シェル石油は、燃料の探索や開発がミッションなので、難しい立場に立たされているといえるでしょう。そういう意味で、広報が重要となっているのです。

今回はグリーンピースのキャンペーンが功を奏すかたちで、レゴ社とシェル石油との関係が解消されたことになります。このことは、化石燃料関連の企業が他ジャンルの企業と組むことで「将来に何の問題もありません」というメッセージを発信することへの、市民サイドの不快感のあらわれともいえます。

※Dr Simonはシェルからもグリーンピースからも資金的援助を受けていません。

【コメント原文】

"To avoid the most serious impacts of climate change most of the known fossil fuel reserves can't be used. That puts companies like Shell in a difficult position, as their value is linked to their ability to find and exploit reserves. They need a public relations fix.

"The success of the Greenpeace campaign breaking the link between Lego and Shell shows that there is widespread public discomfort at the way fossil fuel companies try to get their 'don't worry about the future' message across by linking to other brands. This is a very positive development, as in my view society is better served by more transparency and less PR smoke and mirrors."

 

Dr John Broderick

Energy and Climate Researcher in the School of Mechanical, Aerospace and Civil Engineering at the University of Manchester

気候変動リスクを回避する国際的な公約会議の結果、現在、埋蔵されていることがわかっている化石燃料はそのまま残しておくのがよいと分かりました。この公約を達成するためには、これまでと全く異なるエネルギーシステムを作り上げる必要があります。このような状況を考えると、レゴ社のように子供に影響を与える会社が、化石燃料関連の企業とのこれまでの協力関係を見直したことは理解できるでしょう。

※Dr Broderickの外部からの研究資金の多くは、北西電気経由の Ofgem低炭素ネットワーク基金から出ています。

【コメント原文】

“It is clear that to have a decent chance of meeting our international commitments to avoid dangerous climate change, the bulk of known fossil fuel reserves must remain underground.  To achieve this we will need to build a very different energy system, so it is entirely understandable that a company seeking to inspire children is questioning its historic collaborations.”

 

 

Prof Martin Blunt

Chair In Petroleum Engineering at Imperial College London

レゴブロックはプラスチックで作られていますし、そのプラスチックは油から作られています。製油業がなくなればレゴ社は存続できないでしょうが、レゴ社がなくなっても製油業は続くでしょう。

※Bluntはインペリアルカレッジ時代にシェル石油から研究資金援助を受けていました。

【コメント原文】

"Lego is made out of plastic and the plastic is made from oil.  There would be no Lego without the oil industry, but there will still be an oil industry without Lego." 

 

 

Prof Chris Rapley

Professor of Climate Science at University College London

製油会社を悪者にするのは簡単ですが、このような契約解消を求めるのはあまりに単純な選択です。私たちは日常生活のエネルギーを化石燃料で賄っているのですから、偽善的とも言えます。

シェル石油側は温暖化や気候変動を認識しており、その上で将来的な計画を立てています。アクティビストというわけではありませんが、石油企業からエネルギー企業への変革を図っているようです。

一方、レゴ社の決定は環境活動家を喜ばせるだけで、私たちの期待どおりにはならないでしょう。

※Rapleyはシェル石油のシナリオチームワークショップへの参加経験があり、その際の謝礼と交通費はシェル石油持ちでした。

【コメント原文】

“It is all too easy to demonise the oil companies, but demanding this kind of disengagement is just too simplistic.  It’s also hypocritical because we wouldn’t be able to live the lives we take for granted without the supply of energy these companies provide to us.

 

“We need a sensible balanced and intelligent debate with the oil industry in which we critique bad things they do and embrace the positives.  The people I talk to in the Shell "Scenarios" Team are bright, thoughtful people, trying to work out how to navigate a way forward to a better future – accepting that climate change is real, driven by humans and not likely to be a good thing.  It is scientists and engineers like these, not the activists, who in the end will deliver the alternatives to fossil fuels and are turning companies like Shell from oil companies into energy companies.

 

“10 out of 10 to campaigners like Greenpeace for wanting to provoke change.  0 out of 10 for this campaign, in my opinion, which might attract headlines and make them feel good, but does not address the real issues and will not deliver the changes we all need.”

 

 

 

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