専門家コメント
ESFAがビスフェノールAを含む製品のリスクなしと報告:専門家コメント
・これは、2015年1月29日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<SMC発サイエンス・アラート>
ESFAがビスフェノールAを含む製品のリスクなしと報告:専門家コメント
欧州食品安全機関(ESFA)は、1月21日付けで「ビスフェノールA(BPA)を含む製品に健康被害のリスクはない」と報告しました。この件についての専門家コメントをお送ります。
報告原文
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/150121.htm
ESFA問い合わせ先
EFSA Media Relations Office
Tel. +39 0521 036 149
井口泰泉 教授
自然科学研究機構 基礎生物学研究所
ビスフェノールA(BPA)は、缶詰や缶飲料の缶の内側のコーティングやポリカーボネイト樹脂の原材料として使用され、感熱紙にも用いられています。女性ホルモン様に作用することが知られており、体内に取り込まれると内分泌作用をかく乱する懸念があるとして研究が続けられています。
今回EFSAは、最近のさまざまな研究結果と乳幼児から大人までの曝露量の推定値を元に、「BPAの体重1kg当たりの耐用一日摂取量」を2006年に設定した50マイクログラムから4マイクログラムに引き下げました。実際の曝露量は、この値の3分の1から5分の1と推定しています。一方、フランスは、食物に直接触れる哺乳瓶や缶詰の缶などへのBPAの使用を禁止しています。ヨーロッパ連合では、化学物質の安全性や悪性影響についての新たな動物実験を行っていないため、評価は既存の論文や各国の試験のデータが元になっています。
内分泌かく乱物質については、「どのような影響を悪影響とするのか」という点で議論が続いています。BPAの曝露量は減少しているものの、安全性の懸念が残されていることを考えると、国際的共同機関主導で動物実験を行い、ヒトや動物が曝露する濃度での安全性を判定するのがよいと思います。一方、アメリカではBPAを用いた動物実験がなされているとの情報もあり、こちらの結果も待ちたいと思います。悪影響を引き起こすメカニズムの解明を進めるとともに、BPAを他の物質に変える場合の代替物質の曝露量を推定、安全性試験も行う必要があります(*)。
*1月7日付けで、BPAがゼブラフィッシュの過剰な神経活動を引き起こすとする論文がPNASに掲載された。以下は原文。
http://www.pnas.org/content/early/2015/01/07/1417731112
上記論文に対する豪SMC発の専門家コメント(原文)
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