2015328
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専門家コメント

キシリトールの虫歯予防・修復効果には現時点で十分なエビデンスが認められず

・これは、2015年3月27日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

<SMC発サイエンス・アラート>

キシリトールの虫歯予防・修復効果には現時点で十分なエビデンスが認められず:専門家コメント

イギリスの研究グループがキシリトールの虫歯予防・修復効果について検証した結果、そのエビデンスが十分とは言えないというレビューを発表しました。レビューは過去の臨床試験を吟味したもので、3月26日にCochrane Reviewsとして発表されました。
この件に関する専門家コメントをお送りします。
※Cochrane Reviews: 特定の疾病に対する治療行為を取り上げ、ランダム化比較試験により得られた調査結果を要約することで有効性を示すレビュー

【論文リンク】(アブストラクトのみ無料でご覧いただけます)
Philip Riley et al. 'Xylitol-containing products for preventing dental caries in children and adults’ , Cochrane Library,  2015.
http://onlinelibrary.wiley.com/enhanced/doi/10.1002/14651858.CD010743.pub2

 

高橋 信博 教授

東北大学大学院歯学研究科 口腔生化学分野

 

本レビューは、キシリトール含有食品の「抗う蝕効果(虫歯を積極的に予防したり修復する効果)」に対するエビデンスが不十分であることを指摘したものです。

緒言にあるように、キシリトールをはじめとする糖アルコール(ソルビトールやエリスリトール等)は歯垢によってほとんど酸を生じないことから虫歯の原因にならないこと、したがって、菓子類等において、それに含まれる発酵性糖質成分(砂糖等)を糖アルコールに置き換えることが虫歯発症の低減に効果的であることは、周知の通りです。これに加え、キシリトールについては「虫歯の原因とならないこと」以上の効果、すなわち特定の細菌に対する増殖阻害、再石灰化促進、唾液分泌促進といった「抗う蝕効果」が報告され、多くの臨床研究が行われてきました。しかしながら、冒頭に記したように、キシリトールがもつと考えられてきた抗う蝕効果を認める質の高いデータはないことが示されました。この結果から、キシリトールは、他の糖アルコールと同様にう蝕の原因となる酸を産生しない甘味料であり、現段階では、キシリトールの抗う蝕効果については未定であると認識することが妥当と思われます。

さらに本レビューでは、今後、キシリトールの抗う蝕効果の有無を検討する研究に必要な事項として、ランダム比較研究を行うこと、利益相反に触れないこと、SPIRIT2013(注1)に準拠する質の高い研究プロトコールを用いること等の基本的事項から、キシリトールの効果を唾液分泌促進効果と区別するためにキシリトールを含まないプラシーボ食品を用いること、う蝕発症数を歯単位ではなく歯面単位で算定すること、胃腸障害等の副作用を明記すること等の具体的事項まで言及しており、キシリトールに限らず、食品の疾患予防効果等の機能性を評価する上で、大変有益な提言となっています。

注1: SPIRIT 2013
臨床試験におけるプロトコール作成のためのガイドライン
【参考リンク】
http://www.spirit-statement.org

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