2015427
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専門家コメント

資源採掘と地震に関する論文について

・これは、2015年4月27日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

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<SMC発サイエンス・アラート>

資源採掘と地震に関する論文について:専門家コメント 

アメリカの研究者らは、2013年から、アメリカ北中部テキサスのシェールガス採掘場でもあるAzle地域で連続して起きている地震は、採掘の際の塩水生産と廃水注入によって引き起こされているとの報告をしました。論文は4月22日 付けのNATURE COMMUNICATIONSに掲載されました。

この論文に対する専門家コメントをお送りします。

 

【論文タイトル等】

Causal factors for seismicity near Azle, Texas, Matthew J. Hornbach, et al., NATURE COMMUNICATIONS, 2015, DOI: 10.1038/ncomms7728.

http://www.nature.com/ncomms/2015/150421/ncomms7728/full/ncomms7728.html

 

小笠原 宏 教授

 立命館大学 理工学部 物理科学科

石油やガス、鉱山での採掘、 水の圧入、ダムの貯水などの人間の行いによって誘発される地震は前から知られていますが、特にシェールガス開発や枯渇油田の再開発に伴って、世界各地の普段地震がほとんど起こらないところで地震が発生し始め、ここ数年の間に世界的に大きく注目され始めました。

シェールガス開発や枯渇した油井の再開発では、地下数 kmの地層を水の圧入で割って資源を回収し、同時に回収される汚染された水を地中に戻すということが必要です。このようなことが行われている井戸の数は世界各地で十万を超えます。多くは有感地震を伴わないのですが、開発が断層付近である場合は、マグニチュード5の地震が発生したこともあります。また、福島原発の事故以来、代替エネルギーとして期待される地熱発電も、水の圧入が必要で誘発地震をどう制御するかが重要な課題です。予想最大マグニ チュード、地域やインフラに与える影響、あるいは、地震制御方法を知るためには、震源のストレスや強度、そして、水の影響を時空間的に定量的に評価する必要があります。

この論文は、これまで手薄だった地震観測を強化した際に見えてきた地震活動と断層との位置関係をヒントにして、シェールガス開発に特有の地質条件下において、地下の水の挙動を計算機で時空間的に定量的に評価したという点で評価できます。しかし、震源(地震が起こり始めるところ)での応力・強度・水の直接測定が困難なため、どうしても研究に限界があります。水が地震に及ぼす影響は、自然の巨大地震や群発地震を理解するためにも非常に重要です。震源での直接測定という試みが何とかして行われないかと願っています。

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