2011118
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「豪州クイーンズランド洪水」に対する専門家コメント

 

Ver.1.7 (Updated: 120717-11:30)

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<SMCJ発 ホット・トピック>

「クイーンズランド洪水」に対する専門家コメント

 既に日本でも報道されている通り、2010年12月から豪州北東部クイーンズランド州を中心に襲った大雨により、大きな洪水の被害が出ています。現在は死者20名、行方不明者が14人になっています。現在の状況に関してオーストラリアのサイエンス・メディア・センター(AusSMC)から、専門家の意見をお届けします。(翻訳:SMCJ)

ネビル・ニコルス教授(Professor Neville Nicholls)

モナーシュ大学地理環境科学研究科, オーストラリア気象海洋学会会長
Australian Research Council Professorial Fellow, Monash University School of Geography & Environmental Science, Australian Meteorological and Oceanographic Society President

「今回のクイーンズランド州の洪水は、19世紀後半から続いている記録のうち、ラニーニャ現象が原因の災害のなかでも、一、二を争うのものでした。去年10月に気象局から伝えられたラニーニャとその影響に関する情報では、オーストラリア東部に平均以上の雨が大幅に増加する可能性が高いと予測されていました。また、オーストラリア周辺で観測された記録的な海の最高表面温度はラニーニャの影響を受けていて、これが豪雨と繋がったと思われています。洪水・暖かい海・強いラニーニャが、どれぐらい地球温暖化と繋がっているのは、まだ分かりません。なぜならこの関係を検証するのに必要な研究がまだ行われてないからです」

【コメント原文】

The Queensland floods are caused by what is one of the strongest (if not THE strongest) La Niña events since our records began in the late 19th century (http://www.amos.org.au/news/id/105). Our understanding of the La Niña and its impacts meant that the Bureau of Meteorology, as early as October, was warning of substantially increased chances of above average rain across eastern Australia (http://www.bom.gov.au/climate/ahead/archive/rainfall/20100923.shtml). The La Niña is also associated with record warm sea surface temperatures around Australia and these would have contributed to the heavy rains. The extent to which any of this (the floods, the warm oceans, or the very strong La Niña) is linked to global warming is unknown, because the requisite studies to test this have simply not been done yet

ジェニファー・マッケイ教授(Professor Jennifer McKay)

南オーストラリア大学 比較水政策と法センターディレクター
Director, Centre for Comparative Water Policies and Laws, University of South Australia

「ダムを建てれば問題が解決できるとは限りません。ブリスベンの市議会および他の上流市議会は、氾濫を招くような土地利用と開発政策を調整する必要があります。

 オーストラリア国内では、どこの地方議会もこういった調整をしていません。また、州政府はこの問題に関してリーダーシップを発揮しておらず、氾濫原(*3)となる地域に住宅や養護老人ホーム、高齢者介護や病院を建てることを制限せずにいます。

 連邦政府が各州に進めさせている治水計画は、持続可能な開発を達成するための一つの方法でしょう」

*3: 「氾濫原」洪水時に河川からあふれた水で覆われる平原部。

【コメント原文】

Dams are not the total solution. Brisbane city council and the other upstream councils need to coordinate their land use and development policies to reflect the floodplain. All local councils in Australia do not do this and state governments do not provide leadership in this matter anymore by having a policy restricting development of housing and nursing homes, aged care and hospitals in floodplains. The water plans that the Commonwealth is pushing the states to produce is one way to do this to achieve sustainable development.

ロン・コックス教授(Professor Ron Cox)

豪州・ニューサウスウェールズ大学 土木・環境工学部
University of New South Wales School of Civil and Environmental Engineering

 「最近起きたクイーンズランド州の洪水災害は、将来の住居地とインフラ整備における開発計画の見直しが必要なことを示しています。住居地の拡大に伴い、緊急事態を引き起こすような極端な気象が予想され、高温や気候変動が頻発するでしょう」

 

洪水の中を走る乗用車の危険性について:

「流速が遅く、水位が低い場合でも危険な場合があります。ですので、流速や水位に関係なく、流れている水の中を歩いたり運転するのはお勧めしません。流速が早ければ、たとえ足首程度の水位でも、人は転倒することがあり、命の危険があります。洪水の中では歩くより車の方が危険です。深い場合、流れている水の中を歩く方が、車より安全です。なぜならば、現代の車は気密性が高いので、水の中では浮きやすい状態になるからです」

【コメント原文】

The recent flood events in Queensland are a clear indication of the need for improved planning to adapt future development for our settlements and infrastructure. With expanding settlements, extreme weather resulting in emergency situations can be expected to become more frequent with higher temperatures and climate change.

On the safety of people and vehicles moving through floodwaters:

The combination of velocity and depth at which people and vehicles become unsafe is very low so the only practical advice is that people and vehicles should not enter flowing water of any depth. High velocity flows, even at ankle-depth, can knock a person off their feet and put their lives at risk. Vehicles are less safe than people in floodwaters. Generally a mature adult can walk in flowing water to a certain depth more safely than a vehicle can travel in it. Modern vehicles are so airtight that they float very easily.

ロバート・ジョンソン博士(Dr Robert Johnson)

オーストラリア獣協会代表
Australian Veterinary Association spokesperson

  ※ジョンソン博士は、洪水の野生動物への影響について語ってくれました。

「すべての種が影響を受けます。いくつかの種(例えば、鳥)は他の動物よりも簡単に脱出することができるかもしれませんが、生息地へ戻ってくる時に影響を受けます。

 一番苦しむことになると思われるのは、淡水ガメやカエルのような半水棲動物です。今は淡水カメとウミガメにとって繁殖期なので、多くの巣が壊されることにより、数が大幅に減少します。

 また、穴の中で水死したウォンバットやハリモグラが大量に見つかることも予想されています。茂みの中で家を作る小さな陸上動物たちは、今回の洪水の、人の目には見えない犠牲者たちです。

 コウモリたちにも影響は及びます。既に雨の影響で花から蜜が無くなっていますが、これから子どもに餌をあげる気力を失った母親に捨てられた子どものコウモリが増えてくると思います。コウモリが一般的な家の裏庭にある果物木の網に絡まることが増えるかもしれません。

 さらに、今後数週間にわたって、蚊によって媒介される、アルボウイルスやポックスウイルスによって引き起こされるウィルス性疾患が広がるリスクも高まります」

【コメント原文】

All species will be affected. Some (e.g. birds) may be able to escape more easily than others but will be affected once they try to return to their preferred habitat. We expect that semi–aquatic animals such as freshwater turtles and frogs will suffer greatly due to loss of habitat and for freshwater and marine turtles it is the breeding season, so numbers will be profoundly reduced as nests are destroyed. We also expect to see large numbers of drowned wombats and echidnas in burrows – the are the unseen victims here are small land-based animals that make homes in bushes.

Flying foxes – already doing it tough but the rain has washed the nectar off the flowers – expect more orphaned young as their mothers lack the energy to feed them. Flying foxes are more likely to appear in backyards and get caught in fruit tree netting. There is also an increased risk of viral diseases spread by mosquitoes over the coming weeks – such as the arboviruses and pox virus.

Immediate factors affecting animal rescue and care include the availability of carers and communication, the facilities available, the availability of feed and the equipment available. Lack of feed means that young macropods such as kangaroos and wallabies are more likely to die from high parasite loads over the next two months.

Triaging of animals once delivered to carers will include orphaned animals (marsupials, birds) which will need to be hand reared, injured animals, diseases (this will happen later as infections take hold). We are advising rescuers not put their own life (or others) at risk when rescuing an animal. They should take special care when with venomous or aggressive animals, they should also to be aware of the risk of disease especially from things such as bat bites and contact with dirty water.

トニー・ミックマイケル教授(Professor Tony McMichael)

オーストラリア国立大学 国立疫学と人口健康センター
The Australian National University National Centre for Epidemiology & Population Health NHMRC Australia Fellow

 「洪水後のクイーズランド州では、特に現在の高温多湿なような環境の中では、ロスリバー熱とデング熱の感染症の発生リスクが高まります。今や、蚊の繁殖の機会が大幅に増えてきています。

(ロスリバー熱はクイーンズランド州の風土病であるのに対し、デング熱は通常、海外から帰国する旅行者がウイルスを持ちこむことで流行します)」

【コメント原文】

There is an increased risk of outbreaks of Ross River virus and dengue infections in post-flood Queensland, particularly in these warm and humid conditions. Mosquito populations will now have much greater breeding opportunities. (Whereas the Ross River virus is endemic in Queensland, outbreaks of dengue require 'seeding' of the virus into the population – usually from a returned overseas traveller.)

 

【関連リンク】

○オーストラリア気象局のウェブサイトと最新の降水情報(英語)

http://www.bom.gov.au/qld/flood/index.shtml

 

 

○クイーンズランド州ブリズベーン市から約80キロ離れたいるダム(ウィベンホー・ダム)のファクトシート(英語)

http://www.watergrid.com.au/

 

○アメリカ航空宇宙局NASAが発表したクイーンズランド州の衛星写真

http://earthobservatory.nasa.gov/NaturalHazards/event.php?id=48320

 

○アマチュアカメラマンが捉えたクイーンズランド州ツーウーンバ市の洪水の様子(動画)

www.youtube.com/watch?v=kYUpkPTcqPY&feature=youtu.be

 

 

※このリリース情報は、豪日交流基金の支援のもとに作製しました

 

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