201121
各専門家のコメントは、その時点の情報に基づいています。
SMCで扱うトピックには、科学的な論争が継続中の問題も含まれます。
新規データの発表や議論の推移によって、専門家の意見が変化することもありえます。
記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

新燃岳噴火による人体などへの影響について専門家のコメント

Ver.1.1 (Updated: 110201)

記事の引用・転載(二次使用)は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

※印刷に適したPDFバージョンはコチラです。最新バージョンは、このページです。

この内容は、細部を追加したり、最新の情報に書き換えることがあります。

<SMCJ発 サイエンス・アラート>

「新燃岳噴火による人体などへの影響について専門家のコメント

 

 2011年1月末から宮崎県新燃岳の噴火活動が続いています。これに関して、噴火による噴出物が人体や農作物に与える影響について専門家のコメントをお届けします。

 

○ 柳澤 裕之(やなぎさわ・ひろゆき)教授

 

東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座

 噴火ですから、短中期的には、まず粉塵による呼吸器への影響(咳、痰など)、眼への影響(異物感、眼痛など)、皮膚への影響(皮膚の刺激症状など)が問題になります。粉塵は直接的な影響として呼吸器症状や眼症状を引き起こします。

 しかし、粉塵は有毒ガス(多くのガスは水に溶けると酸性)と共に排出されますから、粉塵は酸性に傾いていることが多く、その酸による作用が呼吸器症状や眼症状を増悪し、皮膚刺激症状を引き起こします。

 対策として、近隣地域の住民は、必要に応じてマスクの着用(可能であれば防塵マスク)やゴーグルの着用(最近、花粉症対策眼鏡なども発売されており、この眼鏡も有用です)がお勧めです。また、皮膚に粉塵が付着した場合には、水で十分に洗い流して下さい。酸性に傾いた粉塵により皮膚の刺激症状が出現することがあります。

 長期的には、火口付近で発生する硫化水素への対応が重要です。硫化水素は無色腐卵臭の刺激性有毒ガスで、低濃度では眼のかゆみや痛み、嗅覚の低下が起こり、中等度では気管支炎や肺炎、高濃度では瞬時に死に至ります。通常、噴火により劣悪な環境状態が続くと精神面でのケアが必要になります。家族や近隣の住民と力を合わせ、助け合うことが重要です。

 更に、衛生状態の悪化による感染症の発症や水質汚濁が問題になりますが、日本では迅速な対応が可能なためそれほど問題にならないでしょう。農作物は、短期的には火山灰や噴石により大きなダメージを受けます(ニュースで報道されている通りです)。中長期的には、酸性化した粉塵(上記)が雨に濡れて、酸性雨(pH 5.6以下)になる可能性があります。酸性雨は、人に対して皮膚刺激症状(上記)を引き起こし、農作物の生育に被害を及ぼす可能性があります。

 以上、一般的な健康被害と対応について述べましたが、予想外の出来事が起こる事も考えられます。その様な状況が発生した場合には、最寄りの保健所や医療機関などに早急に相談することが重要です。

  

○坂本 泰二(さかもと・たいじ)教授

 

鹿児島大学病院 眼科 部門科長

 火山灰は基本的にはケイ酸塩が主体で、それ自体が、生物学的作用を持つことは少ないとされています。

 しかし、火山灰が多量に眼に入るとその機械的刺激により、涙、充血、かゆみ、目やにといった症状が現れます。その場合は、流水で洗い流すことで十分です。痛みを伴うときには、角膜(黒目)に傷が入った可能性もあるので、専門医の受診をお勧めします。

 我々の20年以上にわたる桜島住民検診の結果から、火口から10km以上はなれた地域でも、症状の発生頻度は、火山活動の激しさと一致しました。ですから、眼に見えないほどの灰でも、眼の症状を起こすことが分かりました。ただし、眼の症状を起こすのは、むしろ排気ガスの影響が強いという結果でしたので、あまり過敏になる必要はないでしょう。

【関連リンク】

<随時追加の可能性があります>

 

宮崎県ホームページ 霧島山(新燃岳)の噴火に関する情報提供

 www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/somu/kiki/volcano/sinmoe_funka.html

日本気象協会ホームページ

 霧島山(新燃岳)の噴火情報について

  http://tenki.jp/volcano/entry-998.html

 霧島山(新燃岳)の上空の風向きについて

  http://tenki.jp/mountain/famous100/point-198.html

IVHHN-国際火山災害健康リスク評価ネットワーク

 http://www.geocities.jp/ychojp/ivhhn/index_japanese.html

 ガイドラインとデータベース

 http://www.geocities.jp/ychojp/ivhhn/2010/guideline.html

 火山灰の健康影響/地域住民のためのガイド(旧サイト)

 http://www.geocities.jp/ychojp/ivhhn/guidelines/health/ash_health_japanese.html

 ※このサイト情報は、Twitterでお寄せ頂きました。有り難うございました。皆様からの有用リンク情報などもお待ちしております。

○NPO法人 環境防災総合研究機構(CeMI)

 「霧島山(新燃岳)噴火のサポート情報」

 http://www.npo-cemi.com/kirishima.html

 ※このサイト情報は、Twitterでお寄せ頂きました。有り難うございました。皆様からの有用リンク情報などもお待ちしております。

 

*サイエンス・メディア・センターでは、このような情報をメールで直接お送りいたします。ご希望の方は、下記リンクからご登録ください。

【メディア関係者データベースへの登録】

【ノート】

・ SMCからの「サイエンス・アラート」は、科学技術の関わる社会問題に関し、専門家の知見を素早く伝えることを目的にしています。マスメディア、ウェブを問わず、科学の問題を社会で議論するためにメディアを利用して活動されているジャーナリストの方、ぜひご利用下さい。

 

【記事について】

○ 私的/商業利用を問わず、記事の引用・転載(二次利用)は自由です。

○ 二次利用の際にクレジットを入れて頂ける場合(任意)は、下記のいずれかの形式でお願いします:

・一般社団法人サイエンス・メディア・センター ・(社)SMC

・(社)サイエンス・メディア・センター ・SMC-Japan.org

○ リンクを貼って頂ける場合は http://www.smc-japan.org にお願いします。

【お問い合わせ先】

○この記事についての問い合わせは下記まで:

  一般社団法人 サイエンス・メディア・センター(日本)

  Tel/Fax: 03-3202-2514

  E-mail: smc[at]smc-japan.org

記事のご利用にあたって

マスメディア、ウェブを問わず、科学の問題を社会で議論するために継続して
メディアを利用して活動されているジャーナリストの方、本情報をぜひご利用下さい。
「サイエンス・アラート」「ホット・トピック」のコンセプトに関してはコチラをご覧下さい。

記事の更新や各種SMCからのお知らせをメール配信しています。

サイエンス・メディア・センターでは、このような情報をメールで直接お送りいたします。ご希望の方は、下記リンクからご登録ください。(登録は手動のため、反映に時間がかかります。また、上記下線条件に鑑み、広義の「ジャーナリスト」と考えられない方は、登録をお断りすることもありますが御了承下さい。ただし、今回の緊急時に際しては、このようにサイトでも全ての情報を公開していきます)【メディア関係者データベースへの登録】 http://smc-japan.org/?page_id=588

記事について

○ 私的/商業利用を問わず、記事の引用(二次利用)は自由です。ただし「ジャーナリストが社会に論を問うための情報ソース」であることを尊重してください(アフィリエイト目的の、記事丸ごとの転載などはお控え下さい)。

○ 二次利用の際にクレジットを入れて頂ける場合(任意)は、下記のいずれかの形式でお願いします:
・一般社団法人サイエンス・メディア・センター ・(社)サイエンス・メディア・センター
・(社)SMC  ・SMC-Japan.org

○ この情報は適宜訂正・更新を行います。ウェブで情報を掲載・利用する場合は、読者が最新情報を確認できるようにリンクをお願いします。

お問い合わせ先

○この記事についての問い合わせは「御意見・お問い合わせ」のフォーム、あるいは下記連絡先からお寄せ下さい:
一般社団法人 サイエンス・メディア・センター(日本) Tel/Fax: 03-3202-2514

専門家によるこの記事へのコメント

この記事に関するコメントの募集は現在行っておりません。