2011131
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高病原性鳥インフルエンザ発生に対する専門家コメント

 

 

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<SMCJ発 サイエンス・アラート>

「高病原性鳥インフルエンザ発生」に対する専門家コメント

 

 2011年1月22日未明、宮崎県の農場で飼育されている鳥で、高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されました。現在では鹿児島県でも発生が確認されています。

 今回の鳥インフルエンザに関し、SMCが収集した専門家のコメントをお届けします。

 

○ 大槻 公一(おおつき・こういち)教授

 

京都産業大学 鳥インフルエンザ研究センター長

  高病原性鳥インフルエンザというのは、鳥がかかるインフルエンザの中でも、鶏が感染するとほとんどすべて死んでしまうような致死性の高いインフルエンザのことです。といっても、通常の鳥インフルエンザは鳥を殺さないのですが、養鶏場のような密集した中で鶏が飼われていると、鶏を殺さない鳥インフルエンザウイルスでも、鶏での感染を繰り返すうちに、非常に強い毒性を獲得して、とうとう感染すると3、4日で鶏を殺してしまう恐ろしいウィルスに変化することがあります。高病原性鳥インフルエンザは、あくまでも鳥類に高い致死性を示す疾病で、ほ乳類に対しては別です。人に鳥インフルエンザウイルスが感染する可能性は希にありますが、日本のように衛生のレベルが高い国では、ほぼ起きないと言えるでしょう。

 現在、国内で問題になっているH5やH7と呼ばれる亜型のウイルスによる高病原性鳥インフルエンザは、日本では大正時代に発生したことがありますが、以来79年間発生がありませんでした。

 国内での感染の拡大をふせぐためには、発生した養鶏場では飼育鶏を全部殺処分し、徹底的な消毒を行い、ウイルスが存在しないクリーンな状態にすることがベストの方法です。先進国ではみな同じ方法をとっています。

 重要なのは、感染鶏がごくわずかのときに、いち早く異変に気づいて、ウィルスが増殖する前に完璧に消滅させることです。

 人への鳥インフルエンザウイルス感染は極まれにしか起きておらず、どのような人が感染して、なぜその人が発病したのかなど、全くわかっていません。WHOの発表は氷山の一角でしかなく、感染が見つかった地域に入って実体を掴むことが必要だと考えます。

 日本では野鳥を扱うのは環境省、鶏は農林水産省と対応が分けられていますが、しかし、病原体は一つです。今回のウイルスは、国外から野鳥が持込みましたが、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスはもともとは鶏で発生したウィルスなので野鳥は被害者です。省庁の垣根を越えて、鳥インフルエンザ対策をとらないといけません。野鳥の会などの協力も得ながら、幅広く情報を共有し、野鳥から鶏への感染ルートをブロックする手だてを考える必要があります。おかれた状況は地方により千差万別ですので、地域に即した方策をとることが重要です。

 

○木村 祐哉(きむら・ゆうや) 獣医師

 

北海道大学医学研究科

 高病原性鳥インフルエンザは、ニワトリやウズラなどの家禽産業を脅かすだけでなく、希少な野鳥の数を減らす恐れがある病原体です。また、先の新型インフルエンザも記憶に新しいように、人間に感染するものへと変化する危険性も忘れられません。

 規模の大きな話に聞こえますが、各個人でできることもあります。

 家庭や学校で動物、特に鳥に感染する可能性は皆無ではありませんので、彼らの野鳥と接触する機会を減らし、飼育環境を清潔に保つようにしましょう。きちんと衛生管理すれば、感染の可能性は小さくできます。病気が怖いからと、飼育放棄するようなことはないようにお願いします。

 野鳥の餌付けなど、野生動物を集める行為は慎みましょう。動物が集まれば、そこで感染が広がる恐れがあります。遠くから野鳥観察する程度で感染することはないと考えられますが、靴底などに付着したウイルスを人が運んでしまう問題もありますので、なるべく避けるようにしてください。発生現場に近づくのはもってのほかです。

 現在のところ、家禽で発生した場合には、同様に感染している可能性のある周囲の鳥を一斉に殺処分するという、苦肉の方針がとられています。汚染された製品が出回る可能性も低いですし、仮にウイルスが付着した鶏肉や卵を食べたとしても、そこから人間に感染する恐れはまずないと言われています。

 

【関連リンク】

<随時追加の可能性があります>

 

○国立感染症研究所 感染症情報センター

http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html

 

○厚生労働省 感染症情報 鳥インフルエンザ

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/index.html

 

○農林水産省 鳥インフルエンザに関する情報

http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/index.html

 

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