2011531
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森田幸雄・東京家政大准教授

大規模停電や節電に伴う食中毒の危険性について

 

Ver.1.0 (110524-18:38)

・これは、2011/5/24にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

 

<SMC発サイエンス・アラート>

大規模停電や節電に伴う食中毒の危険性について

 今夏に予想される大規模停電や節電に伴う食中毒の危険性に関し、専門家の解説をお届けします。

森田 幸雄(もりた・ゆきお)准教授

東京家政大学 家政学部 栄養学科

 大規模停電が発生すると、食品のコールドチェーン(冷凍、冷蔵、低温の状態で食品を流通させるシステム)が崩れてしまうことが懸念されます。

 食中毒予防の三原則は、病原体を「つけない」、「増やさない」、「殺す(加熱する)」ですが、その三原則の「増やさない」は食品を冷凍庫・冷蔵庫をもちいて低温で保持することです。よって、停電で冷凍庫・冷蔵庫を動かすことができなくなれば、食品のコールドチェーンを保持することができない、いわゆる「病原体を増やさない」の原則が崩れることが懸念されます。特に夏季に停電をすると、気温が高いので冷蔵庫内温度もすぐに上昇します。

 食品の温度が上昇すると食品に付着している病原大腸菌(O111、O157等の腸管出血性大腸菌も含む)、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌などの細菌が増殖し、それらの食品を食べることによって細菌性食中毒が発生する危険性が増えます。また、食中毒細菌では無くても、普通の細菌も増え、食品が腐敗することもあります。

 冷蔵品等は、食品の流通途中で温度が上昇しても、再び冷やせば、途中で温度が上昇した食品か分からなくなってしまうことあります。よって、飲食店、食品製造所などは停電でも冷蔵庫内温度を記録することができるバッテリー式の自記記録計を設置し、庫内温度が上昇していないかを確認することが必要となるでしょう。それは、家庭内でも同じで、停電になって冷蔵庫内温度が上昇した後、停電が終わり、通常の冷蔵状態に戻っており家庭内では気がつかないこともあります。停電があったか否かをよく確認し、自宅の冷蔵庫の温度が上がっている可能性を考慮に入れて、冷蔵庫内の食品を食べて下さい。冷蔵庫内の温度が上がっていったら、たとえ消費期限内でも食べられなくなることも考えられるので、安全性に不安があるなら廃棄をして下さい。

 また、日本では過去に停電によって大きな食中毒事件が起きたことがあります。平成12年(2000年)に発生した雪印乳業の事件です。これは、脱脂粉乳の製造過程で停電になり、黄色ブドウ球菌が牛乳中で増殖してしまったことで発生した事例です。このように、食品の製造過程で停電になると様々な影響がでます。

 食品の製造、流通、消費の全ての部分で、停電の影響がでると思われますので、注意してください。

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