20111028
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専門家コメント

ソーシャル・ネットワーク上の「友達」数と脳の関係について

Ver.1.0 (111028-22:00)

・これは、2011年10月24日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

<SMC発サイエンス・アラート>

ソーシャル・ネットワーク上の「友達」数と脳の関係について:専門家コメント

 10月19日発行の「英国王立協会紀要B (Proceedings of the Royal Society B)」で発表された論文、『オンライン交流サイト「フェイスブック」上で登録した「友だち」の数は脳の特定部位と関係がある』という研究結果について、研究に関わった専門家と第三者の専門家のコメントをお伝えします。

原著論文:R. Kanai, B. Bahrami, R. Roylance, and G. Rees. "Online social network size is reflected in human brain structure" Proceedings of the Royal Society B, October 19, 2011 【リンク】

金井 良太(かない りょうた)博士

英国・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン認知神経科学研究所

(* 金井博士は今回の研究チームの一員です)

-今回の研究は「フェイスブックが脳を変える」という(一部報道の)扱い方は違う?

 間違いです。フェイスブックが脳の構造を変えている可能性もありますが、因果関係がまだ分かっていません。逆に脳の特定な場所が発している人がフェイスブックで友だちを作りやすいということかもしれません。今回の研究では、どちらがどちらを引き起こしているのは分からないですね。

-なぜフェイスブックを研究対象としたのでしょう?

 まず、英語圏では、学生をはじめ若い世代のほとんどが使っているので、データーがとりやすかったということがあります。また、フェイスブックが、友達の数を知ることができるということがあります。これまでソーシャルネットワークで友だちがどれぐらいいるのかを知るために、使っている当人に『友達は何人いますか?』と尋ねても具体的な数字を出してもらうのは難しく、計測するのが難しかったのです。(研究対象としたのは)そういう理由があります。

-この研究の重要なポイントは何でしょう?

 これまでにも、インターネットが人の認知能力や脳に影響を与えるのではないか、と考えられてきました。しかし、それらは推測だけで、実際の研究は行われてきませんでした。今回の研究のように、実際にデータをとって、何が起きているのかを見る試みは重要であると思います。

-次の研究のステップは?

 ひとつはフェイスブックの友だちの数は何を意味しているのかを研究しようと考えています。そのために、フェイスブックを使っている人の脳と、その人のフェイスブック上の友だちの性格の特性の関係などを見ています。さらにフェイスブックに限らず、インターネットをどのように使っているかや、ウェブ上での行動と脳の関係を様々な方面から見ていこうかと思います。もう一つ、初めてインターネットを使う人の脳がどのように変化するかを見たいと思っています。

-その研究が終わるまでどれぐらいかかりますか?

 種類にもよりますが、脳の画像をとるような研究は一年ぐらいはかかります。心理学的なパーソナリティ・テストで性格をみるのは、もうちょっと早く、半年くらいで最初の成果が得られるでしょう。

 

ハイジ・ジョハンセン=バーグ博士

英国・オクスフォード大学、脳の機能MRI研究センター(FMRIB)

 今回の研究は、2つの変数の興味深い関係を表していますが、この実験は因果関係を示しているわけではありません。(つまり)フェイスブック上で友だちを増やすと、脳も成長するということではありません。今日フェイスブックの友だちを100人増やしたからといって、明日に脳が大きくなるというわけではないのです。

 カギとなる問題は、『フェイスブック上の友だちの数は、その人の何を意味しているのか?』ということです。今回の研究は、フェイスブック上の友だちと実世界の友だちの数の間には、わずかに弱い相関があると発見しました。((弱いと言っても)この相関には統計的な意味はあります。統計的には、実世界の友だちの数の約15パーセントは、フェイスブック上でも友だちだと予測できることになります)しかし、もしかしたら(フェイスブック上の友人数は)インターネットの使用時間の長さ、あるいは年齢、どんな携帯電話を使っているか、といった因子と、より強く関連しているのかもしれません。

 この研究からは、インターネットを使うことは、私たちの脳にとって良い影響を与えるのか、それとも悪い影響を与えるのか、そのいずれの答えをもたらすものでもありません。

 

【コメント原文】

 The study shows an intriguing relationship between two variables but does not test cause and effect. Increasing your Facebook friends does not make your brain grow. If you got yourself 100 new Facebook friends today then your brain would not be bigger tomorrow.

 A key question is what does the number of Facebook friends you have say about you? The study found only a weak relationship between the number of Facebook friends and number of real-world friends. (Although this relationship is statistically significant, the correlation score suggests that only about 15% of the variation in the number of real life friends you have could be predicted by the number of Facebook friends you have.) Perhaps the number of Facebook friends you have is more strongly related to how much time you spend on the internet, how old you are, or what mobile phone you have.

 The study cannot tell us whether using the internet is good or bad for our brains.

 

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