2012218
各専門家のコメントは、その時点の情報に基づいています。
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海外専門家コメント

タバコと高血圧が日本人を殺している

Ver.1.1 (120130-13:00)

・これは、2012年1月25日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

・このサイエンス・アラートは豪日交流基金(Australia-Japan Foundation)からの支援をいただき、作成されたものです。

<SMC発サイエンス・アラート>

タバコと高血圧が日本人を殺している:専門家コメント

 日本人の平均寿命は世界で最も高いが(82.9年)、多くの成人はタバコの喫煙や高血圧を原因に亡くなります。タバコの喫煙を減らすには、その人たちを支援するために設計された、現在使われているプログラムを改善する必要性があるという論文が東京大大学院の池田奈由特任助教らのグループにより、米オンライン科学誌プロス・メディシンに発表されました。この研究について、オーストラリアの専門家のコメントを紹介します。

原著論文: Ikeda N., Inoue M., Iso H., Ikeda S., Satoh T., et al. (2012). Adult Mortality Attributable to Preventable Risk Factors for Non-Communicable Diseases and Injuries in Japan: A Comparative Risk Assessment, PLoS Med 9(1): e1001160.

リンク

マイク・ドービー教授
(Professor Mike Daube)

健康科学、西オーストラリア州・カーティン大学、オーストラリアの喫煙と健康を考察する非営利団体連盟の会長を兼任
Professor of Health Policy at Curtin University, President of the Australian Council on Smoking and Health

 この論文は、日本における最大の予防可能な死亡原因はタバコの喫煙でありながら、日本政府はその対策において他の先進国より遥かに遅れをとっていることを示しています。
日本政府が喫煙に対して妥当な施策をとっていないために、何百万という日本国民は、早まった死を迎え、あるいは苦痛の多い死に至ることを強いられます。 何を行うべきかは、わかっています。しかし日本政府は、喫煙抑制政策を真剣に実施していません。これでは、日本政府は国民の健康保全を実は真剣に考えていないように見えます。
 日本政府は、価格対策(税金)や煙草の販売広告の全面禁止、マスメディアを使ったキャンペーンを行い、非喫煙者を間接喫煙被害から守り、タバコのパッケージラベル制御を効果的に行うなどの領域で施策を実施すべきです。
 日本はまた、世界市場の10%を誇る日本たばこ産業株式会社の本社拠点でもあります。驚くべきことに、この会社は、現在世界中で認識されている喫煙のもたらす危害を認めもせず、世界で行われているような禁煙活動に対し、明らかに反対の働きかけをしているのです。
 オーストラリアは、喫煙抑制における世界の先導者として認識されてきました。その結果、喫煙率は成人および若い青年層で急激に減少しています。これは政府が施策実施の必要性を認識し、包括的なプログラムを組み、しかもあらゆる煙草販促活動を禁止したことの成果です。オーストラリアは法律規制で煙草パッケージの統一を実現し、現在、煙草のパッケージにはタバコ会社の宣伝が全くなく、健康における煙害の情報と警報を図柄で示すのみとなっています。
 これは、政府の意思決定が十分であれば、喫煙抑制の実践で素晴らしい成果を上げることができることを示すものです。
 この報告書によって、日本政府が、強硬措置の必要性に気づき、そしてこのまま実施しないでいると、煙害による大量の死亡、いわば大虐殺を見逃した責任を取らなければならなくなることを認識する契機となれば、と願っています。

【コメント原文】

 "This paper shows that tobacco smoking is the biggest preventable cause of death in Japan – yet the Japanese Government lags far behind other developed countries in its failure to act.

  The policies of the Government are condemning millions of Japanese people now alive to early and often painful deaths from smoking.

  We know the action that is needed, but Japan’s failure to implement serious tobacco control programs seems to show that the Government has no real interest in protecting the health of the community.

  They should act in areas including price policy (tax), banning all tobacco advertising, running major mass media programs, protecting non-smokers from the harms of passive smoking and effective labeling of cigarette packaging.

  Japan is also home to the Japan Tobacco International company, which boasts around 10% of the world market. Amazingly, this company does not even accept the well-recognised dangers of smoking, and undoubtedly lobbies against effective action in Japan, as it does overseas.

  Australia has been recognised as the global leader in tobacco control. As a result, smoking rates have fallen dramatically in adults and young people. This is because the Government recognized the need for action and implemented a comprehensive program, while also banning all forms of tobacco promotion. Australia has now legislated for standardized packaging, so that cigarette packs will have only graphic warnings and health information, with no tobacco company promotion.

  This shows that tobacco control can be implemented with outstanding results, if the government is sufficiently determined.

  I hope that this report will spur the Japanese Government into recognising that tough action is needed – but a continuing failure to act means that it must bear responsibility for the continuing holocaust of deaths caused by smoking."

【関連リンク】

PLos Medicineによるプレスリリース【リンク

論文の報道向けのプレビュー【リンク

PLoS Medicineとは:2004年に設立した米国の科学雑誌「プロス メディシン」は査読体制を持つオープンアクセス雑誌。専門は医学研究。オープンアクセス出版社Public Library of Science (PLoS)が立ち上げたものです。【リンク

 

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