海外専門家コメント
ヒトES細胞(胚性幹細胞)の実験使用に対する、欧州委員会(EC)の見解
Ver.1.0 (140609-22:00)
・これは、2014年6月1日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<SMC発サイエンス・アラート>
ヒトES細胞(胚性幹細胞)の実験使用に対する、欧州委員会(EC)の見解:海外専門家コメント
再生医療分野などでは、幹細胞を用いた研究が世界規模で行われていますが、胚由来の幹細胞(ヒトES細胞)の使用については倫理的な問題があるとして、たびたび議論されています。今回、”One of Us”という団体は欧州委員会(EC)に対し、「ヒトES細胞を使った実験に対して資金提供を行わないようにする法案」を提出しましたが、ECはこれを不採択としました。この件について、海外の専門家コメントを紹介します。
ジェレミー・ファーラー博士(Dr Jeremy Farrar)
Director of the Wellcome Trust
ウェルカム・トラスト理事
ECがヒトES細胞を用いた研究への資金提供制限を認めなかったことを、喜ばしく思っています。幹細胞研究はライフサイエンスにおいて有望なフィールドであり、資金提供を制限することは重大な悪影響を及ぼすと考えます。ECによる資金提供を受け続けることになる再生医療や生命科学分野の研究者は、ヨーロッパにおける健康、社会、経済の発展に大きく寄与するでしょう。
【コメント原文】
“We are pleased to see that the European Commission has rejected calls for funding for stem cell research to be restricted. Stem cell research continues to be one of the most promising fields of biomedical research, and any proposal to restrict funding for research in this area would have had significantly negative impacts for health.
“European Commission funding must continue to be available to support scientists in the fields of regenerative medicine and reproductive health given the huge opportunities for advances in health, society and the economy it can bring to Europe. We are pleased to see the Commission reiterate this support.”
アレステア・ケント氏(Alastair Kent)
Director of Genetic Alliance UK
ジェネティック・アライアンスUK代表
ヨーロッパには、有効な治療法のない遺伝子疾患をもつ患者が大勢います。私たちは、ライフサイエンス研究が患者やその家族を救う治療法開発の最終的な原動力になると考え、注目しています。問題解決への道のりは長いですが、あらゆる研究手法の門が開かれているべきで、ヒトES細胞を用いた研究もその一つととらえています。
【コメント原文】
“Many thousand genetic conditions affect Europeans, of which very few have either a cure or an effective treatment. Our community looks towards biomedical research as the eventual source of cures and effective treatments for the conditions affecting our patients and families. With so much still to achieve, we need all valid research routes to remain open. Research involving embryonic stem cells is one of these routes.”
ロビン・バックル博士(Dr Robin Buckle)
MRC Head of Regenerative Medicine
再生医療医学研究審議会代表
医学研究審議会(MRC)は、今回のECによる回答および、ヒトES細胞を用いた研究に対する資金援助が続くことを歓迎します。今回の決定は、科学者が「芽が出たばかりの幹細胞研究」を続け、そこで得た知見を治療にむすびつける原動力となるでしょう。ECは、最後のフレーム・ワークプログラムの中で、国際協力による幹細胞プログラムの立ち上げを計画しています。どのような制限であってもヨーロッパの科学や競争力に大きなダメージを与える可能性があると考えるべきで、ECによる支援継続は不可欠だったといえます。
【コメント原文】
“The MRC welcomes the response from the European Commission and its continuing support for funding for stem cell research, which will help scientists to translate the burgeoning knowledge in regenerative medicine into new treatment strategies. During its last Framework Programme the Commission established a number of collaborative stem cell programmes which have global recognition, and it was essential that the Commission endorsed its existing support in this area as any new restrictions could potentially have been highly damaging to European science and competitiveness.”
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