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Timothy J. Crone and Maya Tolstoy “Magnitude of the 2010 Gulf of Mexico Oil Leak”
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/science.1195840
に関する、専門家のコメントです。
海外発サイエンス・アラート:メキシコ湾原油流出に関して
これはScience Media Centre (UK)によるサイエンス・アラート(10/23/2010)の翻訳です。
記事の引用・転載(二次使用)は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
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SMC UK
メキシコ湾原油流出を分析した論文に対する英国専門家のコメント
※ 以下は、サイエンス誌オンライン版にて2010年10月23日に発表された論文:
Timothy J. Crone and Maya Tolstoy “Magnitude of the 2010 Gulf of Mexico Oil Leak"
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/science.1195840
に関する、専門家のコメントである。
○サイモン・ボックサル博士、サウスハンプトン大学、国立海洋センター
Dr Simon Boxall, National Oceanography Centre, University of Southampton
「クローンとトルストイの論文は、これまでのメキシコ港の流出に関する研究のなかで、初めて客観的な測定方法が示されており、測定方法も科学的に正統なものだ。(石油会社)BPや米国沿岸警備隊、それと(問題の)石油リグの関係者は、正確な流出状況を発表しなかったことで批判されましたが、この論文によると流出の量を計算するのは難しく、また正確なデータを集めるためには大掛かりなリサーチが必要なようだ。この論文にはこれまで確保ができた原油の予測量は書かれていないが、他の幾つかの研究からは、ざっと400万バレルが流出したと想定される」
「ただ、まだ基本的な問題が残っている。科学は、この原油事故で流出された原油量を追求するべきか、それとも流出した原油の行方を調査すべきなのだろうか?原油が流出していた穴が塞がれたことで分かったことは、この事故は『流出事故としては規模が大きかったが、その影響は大きくなかった』ということだ。流出していた海底の深さ、海の状態、それから海岸保護策によって壊滅的な被害を避けることができた。この研究は、事故が発生している最中の流出率を確認するためには重要な役割を果たすが、事件後はやはり流出された原油の量よりも、その流出した原油の行方にこそ、注意を払い続ける必要がある」
○マーティン・プレストン博士, リバプール大学, 海洋化学
Dr Martin Preston, Senior Lecturer in Marine Chemistry, University of Liverpool
論文の概説:「この研究はビデオ映像解析技術を使って、メキシコ港の原油流出率を計算していた独立研究グループとしては初めての発表になる。この研究結果は、限られた期間中に撮られていた映像に基づいて計算したものだが、事故の初期段階では一日に約6万8千バレル(一秒に0.12立方メートル)の原油が流出されていたと指摘されており、合計は約440万バレル。約70万立方メートルにも及ぶ。データには約20パーセントの不確実性があるものの、今回流出した原油量はエクソン・バルディーズ号原油流出事故に比べて約10倍であり、低く見積もっても、初期の予想よりも10倍高かったと言える」
コメント:「この論文は、海底の原油流出が止められる前と後の流出率の測定を独立した研究チームが発表した最初のものだ。加えて、データの不確実性の範囲内ですが、事故の原油流出量は他の研究(例えば海況監視衛星NOAAを用いた研究)の結果とほぼ一致している。間違いなく、この研究はBPに対する経済的制裁に際して、法的評価の資料として使われるだろう」
○ サイモン・リカビー氏, 海洋科学技術工学研究所所長, 汚染・サルベージ特殊調査グループ
Simon Rickaby, Chair of the IMarEST (The Institute of Marine Engineering, Science & Technology)、Pollution and Salvage Special Interest Group, and Managing Director of Braemar Howells Ltd.
「海底1マイルから流出した原油量が実際にどれぐらいだったのかを証明するのは不可能なので、(発表された)量は間違っている可能性もある。BPが船で回収した石油から確実な量は計測できるが、これにも海水や原油が多少は混ざっており、海底パイプから直接回収したものではない」
「ビデオ映像に見える水中の煙がこの研究の計算に使われたようだが、この水煙の中にも多少のガス、水、そして石油が含まれている。そういった要素も考慮に入れなければならない。率直にいって、私はこの研究者たちが自分の結果に自信を持っているのが不思議だ。もちろん彼らの結果を疑っている訳では無いが、私が言いたいのは、このような課題をクリアーしないと、結果が正確だとは言えないということだ」
「とはいうものの、原油流出に素早く対応できるように、このような新しい技術が開発されることに対しては歓迎したい。未来に起きるであろう事件にこの測定法を使う事によって、より正確な情報を得られるようになるだろう」
「しかし、忘れてはならないのは、原油流出事故の重要ポイントは流出した原油量では無く、原油の種類と環境に悪影響を及ぼす可能性がある原油がどのくらいあるのかを測定することだ」
「今回の事件で流出された原油の量はエクソン・バルディーズ号流出事件(米国, 訳注:1989年に起こった史上最大級のタンカー原油流出事故)、プレスティージ(スペイン)やエリカ(フランス)といった起きた流出事故に比べると大きいが、環境へのダメージは小さいかもしれない」
「皮肉なことに、流出した原油よりも人間の行動のほうが、観光ビジネスに影響を与えるかもしれない。地元の観光地には、まだ原油は流れ着いていないが、メディアの報道のせいで観光客が減少している」
【日本版向け参考リンク】
▼海上技術安全局安全基準課安全評価室「主要なタンカー原油流出事故について」
http://www.mlit.go.jp/kaiji/seasafe/safety11_.html
▼JST失敗知識データベース「メンテナンス不良による石油タンカー沈没事故」
http://shippai.jst.go.jp/fkd/Detail?fn=0&id=CA0000472
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