2010112
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 オーストラリア政府は、バイオテクノロジーに対する国民の意識調査の結果を発表しました。この全国調査は、幹細胞研究、遺伝子組み換え食品、クローン肉のようなバイオテクノロジーを人々がどの程度許容しているかを調査してまとめたもので、半年ごとに報告されています。
 調査の結果、オーストラリア国民は、人間の健康や環境に役立つ研究は強く支持するものの、遺伝子組み換え食品に対しての支持は2007年に比べるとわずかに減少が見られました。
 この調査は独立企業IPSOS Eureka Social Research Instituteが2009年12月から2010年6月の間に行ったもので、18歳以上のオーストラリア人1000人に電話とアンケートによる調査を行っています。

海外発サイエンス・アラート:豪州バイオテク意識調査に関して

・これはAustralian Science Media Centre (AusSMC)によるサイエンス・アラート(10/25/2010)の翻訳です。

・記事の引用・転載(二次使用)は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

・このサイエンス・アラートは豪日交流基金(Australia-Japan Foundation)からの支援をいただき、作成されたものです。

・印刷用PDFファイルはこちらからダウンロードできます。

<AusSMC発・サイエンス・アラート>

「オーストラリア国民のバイオテクノロジー意識調査」に対する豪州専門家のコメント

 オーストラリア政府は、バイオテクノロジーに対する国民の意識調査の結果を発表しました。この全国調査は、幹細胞研究、遺伝子組み換え食品、クローン肉のようなバイオテクノロジーを人々がどの程度許容しているかを調査してまとめたもので、半年ごとに報告されています。

 調査の結果、オーストラリア国民は、人間の健康や環境に役立つ研究は強く支持するものの、遺伝子組み換え食品に対しての支持は2007年に比べるとわずかに減少が見られました。

 この調査は独立企業IPSOS Eureka Social Research Instituteが2009年12月から2010年6月の間に行ったもので、18歳以上のオーストラリア人1000人に電話とアンケートによる調査を行っています。

 

ミーガン・マンジー博士(Dr Megan Munsie)

オーストラリア幹細胞研究センター, シニア・マネージャー
Senior Manager, Research and Government at the Australian Stem Cell Centre

「オーストラリアの人々が幹細胞研究に対し、高い関心をもち評価してくれていることがこの調査から明らかになり、うれしく思います。これまでオーストラリア幹細胞研究センターのスタッフは、幹細胞研究に対してご理解をいただけるように、学校の先生や学生、患者団体や、市民団体に向けて、たゆまぬ広報を続けてきました。

「幹細胞研究は、人々の痛みや苦しみを癒す、未知の可能性をもっています。だからこそ、このように高い支持を得ているわけです。しかしながら、これからも基礎的な研究の正確な進捗状況と適切な医療への応用について、誤解を招かぬように、引き続きみなさんにお伝えしていくことが大切です。

「人々の期待が、実際の科学や医学の進歩を追い越すときには、「期待の真空状態」が生まれてしまう危険があります。この「真空状態」がおこると、海外の企業やクリニックの科学的な根拠や安全性の乏しい幹細胞治療に、オーストラリア国民が引き込まれてしまう恐れがあります。私たちのセンターが出している患者ガイドブックには、幹細胞を用いた研究や治療に関心がある皆様のために、特に海外で提供されているものも含め、豊富な情報を提供しています。

「幸いなことに、オーストラリアでは新薬や新しい治療法の試験や認可は、医療システムによりきちんと管理されています。その一方で、医学の進歩は、期待に反して遅々として進まないと感じられる人も多いと思います。みなさんに理解していただきたいのは、幹細胞治療がオーストラリアで認可されるときには、みなさんの厚い信頼と支援があってこそ、安全で効果が高いものになるということです」

 

クルディップ・シドゥー准教授(Associate Professor Kuldip Sidhu)

ニューサウスウェールズ大学, 幹細胞研究所ディレクター/幹細胞生物学講座 准教授
Director of the Stem Cell Lab and Chair of Stem Cell Biology, University of New South Wales

「バイオテクノロジーが人間の健康、食品、そして環境に役立つのは、きわめて明白です。健康については、特に再生医療への幹細胞技術の導入が待たれています。多くの国民がこうした分野の研究の進歩について大きな関心を持ち、それら技術のもたらす利益に期待しています。このような技術の利用に対する懐疑的な見方も、メディアを通じた正しい教育や、そして何よりもバイオテクノロジーの利用を製品に明記していくことで、消えていくでしょう。社会に受け入れられる鍵は、情報の透明性だと思います」

 

クリストファー・プレストン准教授(Associate Professor Christopher Preston)

アデレード大学, 雑草防除講座 准教授
Associate Professor in Weed Management, University of Adelaide

「活動家たちから多くの批判の声が上がっているのにも関わらず、オーストラリア国民の三分の二は食料生産にバイオテクノロジーを使用するのに賛成し続けています。この15年間に、開発途上国を中心に遺伝子組み換え作物の生産は世界中に広がり、農業従事者の数は約1400万人に上っています。つまりバイオテクノロジーは、途上国における農業の問題を解決するということです。しかし、これらの技術が、害虫抵抗性のような新しい問題を生み出さないように、引き続き正しい使い方をしていかなくてはなりません」

 

マイク・ジョーンズ教授(Professor Mike Jones)

マードック大学(パース), 農業バイオテクノロジー講座 教授
Professor of Agricultural Biotechnology, Murdoch University, Perth

「植物や、人間を含む動物の生物学における基礎的な知識は、バイオテクノロジーを通じて急速に深まっています。この知識を世界の人々のために応用していくことは、今後もますます求められるでしょう。

「人々のバイオテクノロジーに対する態度は、科学的な安全性や相対的なリスクの理解により決まるのではなく、しばしば、感覚的な判断や誤った情報をもとに決まってしまいます。遺伝子組み換え(GM)作物もその一つです。GM作物は、現在、世界中で受け入れられ、2009年には26各国、約1億3400万ヘクタールで栽培されています。今年だけでも、西オーストラリアの遺伝子組み換えの菜種の栽培面積は800ヘクタールから7200ヘクタールに広がりました。これは農家からの信頼の証でしょう。

「GM作物は農薬の使用を減らし、収穫を増やし、干ばつのような厳しい環境ストレスへの耐性を上げることができます。この技術は、毎年7000万人ずつ増加する人口を養うために必要な技術です。

「有機農法に代表される収穫量の少ない農業は、現在、生物学的多様性にとって大きなリスクになっています。収穫が少ないと、生物学的多様性が保たれている(本来は農業には適さない)耕作限界地までもが浸食されてしまいます。

「国民意識についてのこの調査は、オーストラリア国民がバイオテクノロジーの利益をより理解する方向に向いていることを示すものです。また、世界が直面する未来の問題を解決するために、バイオテクノロジーがますます活用されるようになることを示しています」

 

【日本版向け参考リンク】

○内閣府「遺伝子組み換え技術に関する意識調査結果について」(平成20年調査)

http://www8.cao.go.jp/cstp/s&tsonota/gmo/index.html

○八木絵香「『子育てママ層』の科学技術に関する市民参加意識」科学技術コミュニケーション 第4号(2008)

http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/34811/1/JJSC_no4_p56-68.pdf

○科学技術動向研究センター「No.3 分科会「バイオとナノテクノロジーを人類貢献へ繋げる」の調査結果」(2010)

http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/rep140j/pdf/rep140j06_No3.pdf

○畜産草地研究所研究資料「体細胞クローン牛肉に対する試食アンケート調査の結果」(2010)

http://nilgs.naro.affrc.go.jp/pub/shiryou/no10/mem-nilgs10_sanko2.pdf

○クローン牛に関するネット意識調査 ※調査バイアスに注意。

Yahoo!アンケート結果「『お墨付き』でもクローン牛は不安」(2010年)

http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/quiz/quizresults.php?poll_id=3199&wv=1&typeFlag=1

Yahoo!アンケート結果「クローン牛、流通しても『食べない』」(2006年)

http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/quiz/quizresults.php?poll_id=127&wv=1&typeFlag=1

 

※このリリース情報は、豪日交流基金の支援のもとに作製しました

 

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