2015312
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専門家コメント

2013年のH7N9型鳥インフルエンザ流行の分析について:専門家コメント

・これは、2015年3月11日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

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<SMC発サイエンス・アラート>

2013年のH7N9型鳥インフルエンザ流行の分析について:専門家コメント

香港の研究チームが、318名の感染者を出した2013年下半期のH7N9型鳥インフルエンザ流行について、ウイルスがどのように変異し拡がったのかを検証しました。家禽が輸送されるルートに沿って5つの省、15の都市に渡り状況を監視することで、ウイルスの変異を特定しています。報告は3月12日付けのNature に掲載されました。この件に関する専門家コメントをお送りします。

【論文タイトル】
Lam, Tommy Tsan-Yuk, et al. ‘Dissemination, divergence and establishment of H7N9 influenza viruses in China', Nature, 03/11/online, 2015

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature14348.html
 

大槻 公一 教授

京都産業大学 鳥インフルエンザ研究センター センター長

この論文は、2013年から中国でヒトにおいて継続的に発生しているH7N9型鳥インフルエンザの原因ウイルスの動態について主に遺伝子レベルで広い角度から総括的に解析された大変興味深いものです。ヒトでの本鳥インフルエンザ発生の波は2回起きています。この2年の間でウイルスの遺伝子にどのような変異が生じたのか、その生じた変異にどのような要因が関与したのか詳細に言及しています。また、このウイルスは短期間で中国東南部に広く拡散しましたが、その原因についても明確に述べています。すなわち、ウイルス汚染家禽類の広い地域での移動と生きた家禽類が多数集積する生鳥市場の存在が原因として指摘されています。その危険性についても述べられています。加えて、H5N1、H9N2亜型鳥インフルエンザウイルスといった他のウイルスと同じように本ウイルスが国境を越えて地球規模での拡散が起きる可能性を警告しています。

今回のH7N9型鳥インフルエンザウイルスは鳥類に対してほとんど病原性を示さない鳥インフルエンザウイルスです。家禽類が生産される中国東部の農村部で飼育されている家禽類が本ウイルス感染の大元です。中国農村部での本ウイルス分布状況の把握が本病撲滅のために最も重要な課題です。本論文でも少し触れられていますが、この点についてほとんど把握されていないのが実情です。この最も重要な部分が本論文で言及されていないのが残念です。

 

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