2015729
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専門家コメント

初のMERSウイルスワクチンに結びつく? サルで感染回避できる免疫原を開発

専門家コメント・これは、2015年7月26日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

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<SMC発サイエンス・アラート>

初のMERSウイルスワクチンに結びつく? サルで感染回避できる免疫原を開発

アメリカの研究グループは、「MERSウイルスのスパイク糖タンパク質や、これをコードするDNAの発現ベクターをサル(マカク)に投与したところ、MERSウイルス(ヨルダンN3株)に対する免疫が誘導されることを確認できた」とする研究成果を発表予定です。著者らは、ヒトで同様の結果が得られるかはわからないとしながらも、初のMERSウイルスワクチン開発に結びつくかもしれないとしています。論文は7月29日付けのNature Communicationsに掲載されました。この件についての専門家コメントをお送りします。

【論文リンク】

Barney Graham, et al., 'Evaluation of candidate vaccine approaches for MERS-CoV', published in Nature Communications, 29 July 2015.

http://nature.com/articles/doi:10.1038/ncomms8712

 

佐藤 佳 助教

京都大学 ウイルス研究所 ウイルス病態研究領域

ウイルスの膜に突き出る「スパイク糖タンパク質」は、ウイルス粒子の中で唯一、外界に露出しているタンパク質です。そのため、最も強く免疫を引き起こす物質(免疫原)になりやすいと考えられています。たとえば、最近、発見された「HIV感染をブロックする中和抗体(broadly neutralizing antibody; bNAb)」もHIVのスパイク糖タンパク質(Env)を標的としたもので、ワクチン開発への一助となることが期待されています。また、HIV研究では「サルのエイズウイルス(SIV:simian immunodeficiency virus)」をマカクザルに接種する実験系が用いられていますが、bNAbはマカクザルにおけるSIV感染を強力にブロックすることも明らかとなっています。

このような他のウイルスとの共通点から類推すると、MERSウイルスのスパイク糖タンパク質が免疫原として機能し得ること、そして、それが感染のブロックに繋がる可能性を示唆しているといえます。

ただし、MERSウイルスもHIVもRNAウイルス(DNAよりも不安定なRNAを遺伝子としてもつウイルス)で、進化や変異の速度がとても大きいウイルスです。そのため、一度は免疫が誘導されたとしても、その免疫をかいくぐる変異体が出現してしまう可能性も無視してはならないと思います。HIVの場合には、bNAb以外にもさまざまなEnvに対する中和抗体が作られますが、それぞれに対して抵抗性をもつ変異ウイルスが存在しています。

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