20151121
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国内専門家コメント

母体の栄養不良で子どもの肝脂肪リスクが高まる

・これは、2015年11月19日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

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<SMC発サイエンス・アラート>

母体の栄養不良で子どもの肝脂肪リスクが高まる:専門家コメント

浜松医科大学の伊東宏晃教授らのグループは、母体の栄養不良が、小胞体ストレス応答を介して胎児脂肪肝の起源になり、成長後の脂肪肝リスクを高めると報告しました。マウスをモデルに組織レベルの検討を行った結果とのことです。論文は 11月19日付けのScientific Reportsに掲載されました。本件についての国内外の専門家コメントをお送りします。

 

【参考リンク】

Keiko Muramatsu-Kato, Hiroaki Itoh, et al., "Undernourishment in utero Primes Hepatic Steatosis in Adult Mice Offspring on an Obesogenic Diet; Involvement of Endoplasmic Reticulum Stress" , published in Scientific Reports

www.nature.com/articles/srep16867 

 

水上 尚典 教授

北海道大学大学院医学研究科 生殖・発達医学講座

この研究は、特にやせ願望を持つ女性の多い日本では、とりわけ重要な成果だと言えます。研究では、ラットを用いて実験を行った結果、妊娠中の栄養不良によって胎仔の脂肪肝のリスクが高くなりました。少々詳しく説明すると、脂肪やタンパク質の運搬・代謝に重要な役割を果たしている細網内皮系(リンパ節や肝臓、骨髄などの内皮を構成する細胞)が子宮内での栄養不良によって異常をきたし、脂肪肝になりやすい体質を持ったラットが生まれました。また、生まれた後に脂肪の多い食事を与えた結果、実際に脂肪肝が発症しやすいことも明らかになりました。

これまでのヒトでの研究成果では, 妊娠前にやせていた女性(体格指数『身長 [m]を体重[kg]の2乗で割った数値』が18.5未満)は、小さな赤ちゃんを産みやすく、そのような赤ちゃんは将来、高血圧や糖尿病といった生活習慣病になりやすいことがわかっています。また、妊娠中の体重増加量も重要で、10kgの増加は必要と試算されています。ヒトでも妊娠時の栄養不良が児の体質(将来、生活習慣病になりやすい)を決定している可能性が高いと思います。

過剰なやせ願望が、自らの体だけでなく胎児にまで危険を及ぼすことを示唆する研究成果です。女性たちが妊娠前からやせ過ぎに注意して、健康な体質をもった赤ちゃんを出産できるよう、メディアでも大きく取り上げられることを期待します。

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