専門家コメント
ノーベル物理学賞 梶田隆章・東大教授:素粒子ニュートリノに質量があることを発見
・これは、2015年10月6日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<SMC発サイエンス・アラート>
ノーベル物理学賞 梶田隆章・東大教授:素粒子ニュートリノに質量があることを発見:専門家コメント
2015年のノーベル物理学賞が、東京大学宇宙線研究所所長でKavli IPMUの主任研究員でもある梶田隆章(かじた たかあき)教授とカナダ・クイーンズ大のアーサー・マクドナルド名誉教授に授与されました。岐阜県飛騨市神岡にあるニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」で大気ニュートリノ振動現象を捉え、ニュートリノが質量を持つ決定的な証拠を示したことが評価されました。この件に ついての専門家コメントをお送りします。
村山斉 教授
東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU) 機構長
本
梶田さんの1998年の大発見は、当然ノーベル賞を与えるべきだ、とずっと思っていました。今までの素粒子物理学のノーベル賞は、すべて「標準理論」という現在の最高の理論を作るのに貢献した人たちが取ってきました。一方、梶田さんと、共同受賞のArt McDonald のお二人は、標準理論だけでは宇宙を説明することができないことを実験的に初めて示したのです。標準理論が物理学の終着点ではなく、今後更に大きな枠組みに変わっていくのだ、という方向性を示した、歴史的な業績です。
実は「なぜ宇宙に我々が存在するのか。1対1でできた物質と反物質のバランスを10億分の1だけ崩し、完全に消滅せずにごくわずかの物質だけが残った。どうしてこのバランスを崩すことができたのか。」という文字どおり我々の存在がかかった大問題がありますが、ニュートリノが質量を持っていることがわかったために、ニュートリノが物質を反物質を入れ替える橋渡をし、我々を完全な消滅から救ってくれた「父親」ではないか、という期待が生まれました。この考え方はカブリ数物連携宇宙研究機構の福来・柳田お二人の理論ですが、梶田さんの発見の後俄然有力視されるようになり、今ではアメリカの素粒子物理ではこの研究を最優先で進めています。素粒子物理学の研究流れを変えた研究です。
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