2016319
各専門家のコメントは、その時点の情報に基づいています。
SMCで扱うトピックには、科学的な論争が継続中の問題も含まれます。
新規データの発表や議論の推移によって、専門家の意見が変化することもありえます。
記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

海外専門家コメント

FDA、フロリダでの遺伝子組換え蚊の放出を許可

・これは、2016年3月16日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

<海外SMC発サイエンス・アラート>

FDA、フロリダでの遺伝子組換え蚊の放出を許可:海外専門家コメント

3月15日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、フロリダキーズ(フロリダの最南端にある島々)で行われた遺伝子組換え蚊(GE蚊)の野外実験により、ヒトにも環境にも害はないだろうとの見解に達したと発表しました。30日間にわたる予備実験の結果、「明らかな影響は見つからなかった」と結論付け、フロリダキーズに設けられた蚊の制限区域において、英国のバイオテクノロジー企業Oxitec社が開発したGE蚊を放出できるようにするとのことです。この件について、海外専門家コメントをお送りします。


翻訳は迅速さを優先しております。ご利用の際には必ず原文をご確認ください。

 

【参考リンク】

FDA announcement: 
http://www.fda.gov/AnimalVeterinary/NewsEvents/CVMUpdates/ucm490246.htm 

 

Dr. Jason Rasgon

Associate Professor of Disease Epidemiology, Penn State University

今回のFDAの発表は驚くことではありません。ネッタイシマカ(デングウイルスやジカウイルスを媒介)をコントロールするには、Oxitec製GE蚊の放出はいいアイデアです。あらゆるところに殺虫剤を噴霧するよりも負荷は少ないと思いますし、すでに多くの国で駆除効果が証明された戦略だと思います。

原文

"I’m not surprised that the FDA has published a finding of no significant impact. As far as controlling Aedes aegypti goes, releasing the Oxitec mosquitoes is a good idea because it’s safe and the chance of something going wrong is pretty negligible. It’s definitely got a lower environmental footprint than spraying insecticides all over the place and has good chance of controlling Aedes aegypti. I’m a fairly big supporter of the technology which has been proven to work in a number of countries already. Of all the GM or GM-like strategies for mosquito control that are being talked about I think it’s by far the safest and the least likely to have off target effects."

Dr. Bruce Hay

Professor of Biology, California Institute of Technology

FDAによる今回の決定はタイムリーであり、歓迎すべきことです。デング熱、チクングニア熱、ジカ熱のウイルスはネッタイシマカによって媒介され、南北アメリカにおいてはこれまで存在しなかった外来のウイルスです。 FDAはOxitec社などから提供されたデータや情報を厳しく評価したうえで、雄のGE蚊の放出によってネッタイシマカの個体数を減らすことができ、生物学的な影響はないとしています。

原文

"This is a welcome and timely decision by the FDA. Dengue, chikungunya and Zika are all dangerous viruses transmitted by the Aedes aegypti mosquito, an invasive species that has no business being in North or South America at all. The FDA's evaluation of data and information from Oxitec and others was rigorous and complete. In short, there is no biologically plausible mechanism by which the release of these male mosquitoes could do anything other than what it is intended to do, which is to decrease the population of the wild Aedes aegypti mosquito population." 

Dr. David O’Brochta

Professor, Department of Entomology, University of Maryland 

今回の成果により、遺伝子組換えを用いてネッタイシマカの個体群をコントロールするOxitec社のアプローチが効果的だと裏付けられました。フロリダでのOxitec社のフィールド実験において悪影響は認められなかったとするFDAの見解は、驚くものではありません。放出された雄のGE蚊は、雌と子孫をターゲットにきわめて高い特異性と有効性を発揮する「非化学的な殺虫剤」といえますが、Oxitec製の自死遺伝子がはたらいて死に至るので、環境中には残りません。

原文

"Oxitec’s general approach to developing a control strategy for reducing populations of Aedes aegypti using genetics is well documented as is their specific technology in this case, OX513A mosquitoes.  I am not surprised by a finding of no significant impact by the FDA for their proposed field trial in Florida.
"A male OX513A mosquito released by Oxitec is essentially a flying non-chemical 'insecticide' that seeks out and targets Aedes aegypti females and their offspring.   These mosquitoes do not persist in the environment and all mosquitoes with Oxitec’s mosquito-killing gene die.  High specificity, high efficacy and no persistence in the environment is more than can be said about the current approaches used to control Aedes aegypti in Florida, which involve fairly non-specific chemicals that have a measurable environmental footprint."

他にも下記に専門家コメントが掲載されています。

http://geneticexperts.org/fda-gives-preliminary-go-ahead-for-florida-release-of-genetically-engineered-mosquitoes
 

 

 

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