海外専門家コメント
フタル酸ジブチル暴露が骨形成に影響するとの報告
・これは、2016年4月13日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<海外SMC発サイエンス・アラート>
フタル酸ジブチル暴露が骨形成に影響するとの報告:海外専門家コメント
オーストラリアの研究チームは、若いマウスに低用量のフタル酸ジブチル(DBP)を曝露させたところ、成熟後に骨密度への影響がみられたとする成果を発表しました。これは生殖器に影響がでたとする前回の報告に続くものです。フタル酸類はプラスチックを柔らかくするため、ビニール製の床やシャンプー容器といった幅広い製品に用いられています。ただし、欧米、および日本では6歳未満を対象とするおもちゃにはDBPの使用は禁止されています。この件について、海外専門家コメントをお送りします。
翻訳は迅速さを優先しております。ご利用の際には必ず原文をご確認ください。
【参考リンク】
Bielanowicz et al."Prepubertal di-n-butyl phthalate exposure alters Sertoli and Leydig cell function and lowers bone density in adult male mice", Endocrinology. doi: 10.1210/en.2015-1936
http://press.endocrine.org/doi/pdf/10.1210/en.2015-1936
一般財団法人 食品分析開発センター
http://www.mac.or.jp/mail/140301/03.shtml
Dr Ian Musgrave
Senior Lecturer in the Faculty of Medicine, School of Medicine Sciences, within the Discipline of Pharmacology at the University of Adelaide
DBPは接着剤からプラスチックまで、さまざまな工業製品に使われている化学物質です。すでに生殖系に影響を及ぼすことが分かっているため、その使用には規制が設けられています。
今回の論文では、成熟前のマウスに17日間DBPを曝露させた後、成体になるまで追跡調査した結果、骨密度に影響がでたことを報告しています。一日に、体重1キログラムあたりで換算して100ミリグラムと500ミリグラムのDBPを与えられていたマウスでは、骨の形成具合を示す12指標のうち、3つ(骨髄体積や大腿骨の長さなど)で明らかに減少が見られたということです。一方、骨密度については、一日に1キログラムあたり10ミリグラムのDBPを与えられていたマウスでは減りましたが、それよりも多い用量の時には減少は見られませんでした。
これは興味深い結果です。今後、その背景にあるメカニズムや、より多い用量のDBP曝露時にはなぜ骨密度が影響を受けないのかについて、さらに調査する必要があるでしょう。ただし、ヒトの場合、DBPの曝露可能な上限値は1日に体重1キログラムあたり0.01ミリグラムとされており、これは、今回の骨密度を減少させた用量よりも1000倍低いレベルとなっています。
原文
"Dibutyl phthalate (DBP) is a chemical used for a variety of industrial purposes, from adhesives to plastics. It has been shown to have effects on the reproductive system, and its use is limited.
This latest paper shows that exposure to DBP may have effects on bone density when pre-pubertal mice are exposed to DBP for 17 days then followed to adulthood.
Twelve measures of bone formation were assessed and three of these, including bone marrow volume and femur length, were significantly reduced in mice fed 100 and 500 mg DBP per kilogram of body weight per day. Bone mineral density was lower when mice were exposed to 10 mg DBP per kilogram of body weight per day, but not at higher exposures to DBP.
This is an interesting result, and will require further investigation to determine the mechanism behind these changes and why mineral density is not affected by higher doses. However, in terms of human exposure the maximum human exposure limit is 0.01 mg per Kg body weight per day, a level that is 1000 times lower than the doses that produced reduce mineral density. In the 24th Australian diet study, only two of 48 surveyed foods had detectable DBP, and it would require eating over 10 Kg of the food every day to reach the levels of DBP that reduced bone mineral density in mice."
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