海外専門家コメント
自動運転車の倫理的ジレンマ
・これは、2016年6月24日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<海外SMC発サイエンス・アラート>
自動運転車の倫理的ジレンマ:海外専門家コメント
米国の研究チームは、被害が避けられない時の運転判断といった自動運転車の倫理的ジレンマについて一連の調査結果を発表しました。論文によると、消費者は自動運転車の実用化にポジティブな態度を示しており、ドライバーを守る自動運転車であれば、ある程度高額であっても購入するとの結論です。研究チームによると、緊急時の挙動など自動運転車の実用的な問題は規制によって解決できるかもしれませんが、規制をかければ自動運転車の導入が遅れて、さらに自動車事故による死亡者数が増えてしまうとしています。論文は24日、Scienceに掲載されました。
この件についての海外専門家コメントをお送りします。
翻訳は迅速さを優先しております。ご利用の際には必ず原文をご確認ください。
【参考リンク】
Bonnefon et al,"Public's Moral Inconsistencies Create Dilemma for Programming Driverless Cars", Science, Article #15, 2016,10.1126/science.aaf2729
http://science.sciencemag.org/content/352/6293/1573
ビデオ解説
https://www.youtube.com/watch?v=nBkQQ6czRJI
Prof Hossein Sarrafzadeh
Director, Centre of Computational Intelligence for Cyber Security and High Tech Transdisciplinary Research Network, Unitec Institute of Technology
本研究で提起された問題は重要ですが、問題はそれだけにとどまりません。私たちの生活に多くの機械が使われている現在、機械にどれくらいコントロール権を与えるかがさらに重要になってきます。
今回の課題は、軍のパイロットが墜落時に行う意思決定に似ています。例えば、墜落する飛行機が住宅街に落ちるリスクや、住宅地外まで飛行機を飛ばしてパイロットが生き延びられるかどうかというリスクが発生するなどです。ただし、このようなケースはめったに起こることではありませんし、自動運転車の場合でもそれほど起きないでしょう。
すでに多くの自動車会社や大学がこのテーマで研究を始めています。自動運転車が一般道で普通に走るようになる前に、この課題を解決する必要があります。
原文
"The issue raised by this paper is an important one but perhaps not the only one. We need to decide how much control we give to machines and as machines are used more extensively in our lives this question becomes more central.
"This is an example of a global issue which is best studied using a transdisciplinary approach. More work needs to be done by social scientists, computer scientists, engineers, insurance companies and those involved in legislation.
"The challenge raised in the paper is similar to the decision a military jet pilot would need to make when the plane is crashing and there is a risk of the plane crashing in a residential area and whether or not the pilot(s) risk their lives to continue to fly the plane out of the residential zone. The possibility of cases such as this happening in aviation is not high. The same may be true in the case of driverless cars.
"Many automotive companies and universities have already started research aimed at studying this life and death challenge. Although driverless cars will need to substantially reduce the risk of accident situations such as what is raised in this paper, such issues would need to be resolved before driverless cars become common on our roads. When we use artificial intelligence we are trusting a machine to make decisions for us. Trading shares, driving cars and flying airplanes are examples of such cases."
Assoc Prof Ian Yeoman
School of Management, University of Victoria Wellington
私たちは、専門家の意見や科学的な研究がどうであれ、未知を恐れ、科学を信用できないという不安を抱えているようです。今や、無人電車は多くの都市で運転されていますし、主要な国際空港でターミナル接続用として使われています。さらに、無人の宅配ピザシステムも行われているのです。
自動運転車の場合、科学の進歩、経済的議論、そして技術が徐々に変化して、人々の意識が「起こりそう」と「起こるかもしれない」との間で揺れているというような転換期を迎えているのでしょう。
原文
"There is a built in trigger, that we fear the unknown and don’t trust science whatever the expert opinion and scientific studies. This is one of the reasons when the Docklands Light Railway system was introduced in 1987, autonomous safety fears meant each train had a safety operator. Driveless trains now operate in many cities and can be seen in most international airports connecting us between terminals. We already have autonomous pizza delivery systems.
"Autonomous vehicles will reach a tipping point where the advancement in science, the economic arguments and technology get to a point of incremental change and human consciousness ‘that it is going to happen’ and ‘will happen’. First of all we will see a series of small steps. Watch out for uber autonomous taxis in Pittsburgh or autonomous ships or autonomous cargo planes.
"We always fear the future, but without science and advancement we would still be in the cave and the wheel not have been invented."
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