2025415
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岩手県大船渡市の山林火災について 専門家コメント(2025年3月5日・6日配信)

・これは2025年3月5日・6日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。

・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

<SMCJ発サイエンス・アラート>

岩手県大船渡市の山林火災について :専門家コメント

加藤顕、園芸学研究院准教授

千葉大学大学院

岩手県大船渡市で発生した山林火災は拡大しています。森林火災が世界中で頻発している背景には、気象条件、燃焼物の蓄積、そして地形が影響しています。

特に、日本では手入れが行き届いていない森林が多く、乾燥しやすい状況が火災を引き起こしやすくしています。岩手県の山林も、手入れが不足しているため、燃えやすい枯れ葉や低木が蓄積されており、これが火災を助長しています。森林火災は自然現象であり、周期的に発生するものです。乾燥地域では短い周期で火災が起き、湿潤地域では100年、200年に一度発生することがあります。人が火災を抑えることによって燃焼物が蓄積し、大規模火災を引き起こすことにもなります。

人が手を入れた自然は手入れを続けなければならなく、手入れができなくなると火災が発生しやすくなります。森林は気象を穏やかに保つ重要な役割を担っていますが、木を切ることで火災を防ごうとする考えは短絡的です。むしろ、山林火災が発生するリスクを受け入れ、どう付き合っていくかを考えることが重要です。山の手入れや火災への準備を整え、自然と共生する意識を持つことが必要です。また、行政も避難施設や消火設備の整備を進め、火災リスクに対応することが求められます。自然と人間の関係があいまいになる中、山林火災はどこでも発生しうる現象として認識し、日常生活に取り入れていくことが大切です。

串田圭司、生物資源科学部教授

日本大学

山火事が起きてからの鎮火活動、避難活動は適切でしたが、山火事は燃える前の事前対策が重要です。地球温暖化に伴い日本でも山火事リスクが高まりますので、今回の災害を教訓にして大きな山火事が起こりにくい山林にしなければなりません。

大船渡の山火事は1990年代以降の国内最大規模となりました。2024年8月には大船渡に台風が直撃しました。岩手県への台風の上陸は、1951年からの統計史上2例目でした。台風が少なかった地域では、台風が多くの倒木や樹枝の落下を引き起こします。報道で、極端な乾燥、強風、落ち葉の燃焼が木に燃え移り樹冠火が起きたこと、斜面上方に燃えるのが速かったこと、斜面での消火活動が難しいことが、災拡大の要因と捉えられています。一方で、前年8月の台風については取り上げられていませんでした。

地球温暖化が進むと、山火事や干ばつのリスクが高まるほかに、台風が大きくなります。台風の後の山火事は、台風での倒木や落下した樹枝が燃料となり、燃焼を大きくします。今回のような大規模な山火事を防ぐために、台風の後、倒木や林床の樹枝や落ち葉の除去や下刈りが求められます。

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