【SMCJ発専門家コメント】 ニュージーランドで電動キックボードによる骨折が急増
・これは、2025年5月17日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<SMCJ発サイエンス・アラート>
ニュージーランドで電動キックボードによる骨折が急増
ウェリントンにて商業用電動キックボードが導入された後、関連する負傷が大幅に増加したとのこと。医師たちは、商業用電動キックボード導入の直前と直後の2年間ずつの期間における、ウェリントン病院を通じたACC(事故補償公社)への請求を調査した。その結果、電動キックボードに関連する病院受診は20倍以上に増加し、骨折した患者の数は1人から100人以上に跳ね上がったとのこと。これらの負傷が手術を必要とする確率は、オークランドと比べてウェリントンではほぼ2倍であり、著者らはこの理由を山の多い地形にあると指摘している。彼らは、電動キックボードの速度、飲酒運転、防護具の使用に関するルールと教育が有効であると述べている。
New Zealand Medical Journal
Electric scooter–related orthopaedic injuries in Wellington
伊藤大輔 教授
関西大学社会安全学部
本論文はウェリントン病院を通じたACC(事故補償公社)への請求を分析することでウェリントンにおける民営の電動キックスケータサービス導入前後2年間ずつの電動キックスケータ事故実態を調査したものです。
サービス導入前には14件だった電動キックスケータ関連の事故が導入後には295件に増加しました。事故形態としては、キックスケータからの転倒が全体の約8割を占めており、他の研究者による別地区での調査結果とほぼ同等です。一方、四輪車のような移動体との衝突はわずかでした。
骨折箇所は上肢の割合が最も高く、次いで下肢が多い結果でした。また、頭蓋骨骨折や肋骨骨折も報告されています。この分析ではヘルメット着用事例が少なく、その保護効果を示すことはできていませんが、様々な力学的分析から頭部傷害リスクの低減にはヘルメットが有効であることが示されています。
この論文では酩酊状態での骨折を伴う事故割合が高いことが報告されています。日本国内の2024年度上半期調査でも特定小型原付の交通事故に占める飲酒運転の割合が自転車や原付のそれと比較して非常に高くなっていました。電動キックスケータも車両であり、交通ルールの順守が必要であるということを啓発していくことが重要であると考えます。
本成果は今後の我が国の電動キックスケータの安全対策を考える上でも有益な知見であると言えます。
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