オープンラベルプラセボ(偽薬)で月経前症候群が軽減か
・これは、2025年3月27日にジャーナリスト向けに発行したサイエンス・アラートです。
・記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。
<SMCJ発サイエンス・アラート>
オープンラベルプラセボ(偽薬)で月経前症候群が軽減か:専門家コメント
BMJ Evidence-Based Medicine誌に掲載された以下の研究に関する専門家コメントをお送りします。
論文リンク:https://ebm.bmj.com/lookup/doi/10.1136/bmjebm-2024-112875
掲載誌:BMJ Evidence-Based Medicine
論文タイトル:Efficacy of open-label placebos for premenstrual syndrome: a randomised controlled trial
武田卓 所長
近畿大学東洋医学研究所
<コメント本文>
これまでのPMS・PMDD治療の臨床試験ではプラセボ効果が非常に高く、有効性評価の大きな課題となっていた。今回の研究では、プラセボであることを説明した上で投与するオープンラベルプラセボ(OLP)の効果を検討し、安全で新しい治療戦略として期待される結果が示された。
特に、OLPによる治療説明が患者の期待を高め、効果を増強した可能性は興味深い。一方で、参加者が代替医療に好意的な層に偏っている可能性や、投与期間が短く長期効果が不明である点、標準治療の詳細が示されておらず、標準治療薬との直接比較がなされていない点など課題も多い。現時点では、OLPを標準治療に代える結論には至らない。
日本ではPMS・PMDD診療は主に産婦人科医と精神科医が担当し、標準治療薬として産婦人科ではCOC、精神科ではSSRIの処方が中心となるが、診療科によって治療薬の選択肢が狭まることもあり、漢方薬も一般的に使用されている。さらに、COCやSSRIはPMS・PMDDへの保険適応が厳密にはなく、国外において一般的なドロスピレノン含有製剤の承認も得られていないなど、海外との差が課題となっている。目下、日本産科婦人科学会による公開が予定されている「「PMS・PMDDの診断治療管理指針」などの診療指針や一般向け解説素材を整備し、学校や職場での教育や一般内科医での診療拡充につなげることが期待されている。
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