老化と神経変性疾患に関連するバイオマーカーを発見
老化と神経変性疾患に関連するバイオマーカーを発見
Global Neurodegeneration Proteomics Consortium(GNPC) の研究チームは、血漿や脳脊髄液などから得られた35,000超の生体液サンプルを用い、約2億5千万件のユニークなタンパク質測定を含む世界最大級のプロテオームデータセットを発表した。データセットの解析により、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症それぞれに特有の血漿バイオマーカープロファイルと共通するタンパク質の発現パターンを特定し、診断・治療標的となる可能性のある制御タンパク質や経路を明らかにした。また、アルツハイマー病のリスクを高める既知の遺伝子変異 APOE ε4 アレルの保有者に関連する脳脊髄液および血漿中のタンパク質を解析し、この変異がパーキンソン病、前頭側頭型認知症、ALS にも幅広く関与する可能性を見出した。最後に、認知機能と相関するタンパク質の加齢変化を発見し、脳脊髄液や血漿中のタンパク質レベルの変化が認知健康とどのように関連するかについて明らかにした。論文は、7月16日, Nature MedicineおよびNature Agingに掲載された。
【論文リンク】https://www.nature.com/collections/ecegeajbhg
【掲載誌】Nature Medicine, Nature Aging
【掲載日時】2025年7月16日(水) 午前1時
【専門家コメント】
池内 健 新潟大学 脳研究所 生命科学リソース研究センター 教授
この研究は神経変性疾患のバイオマーカー開発に関する新しい国際プロジェクトGlobal Neurodegeneration Proteomics Consortium (GNPC)による成果である。23のコホート研究で収集された大規模サンプルを、網羅的に解析することにより取得された世界最大規模のプロテオミクスデータが発表された。対象となる神経変性疾患としてはアルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭変性症(FTD)、ALS等である。世界の23の先導的研究グループがGlobal Neurodegeneration Proteomics Consortium (GNPC)を構築することにより、この国際プロジェクトが実現した。
この研究により疾患特異的なタンパク量の変化と、小胞輸送、シナプス障害、代謝異常に関連する生物学的な変化が臨床重症度とともに明らかにされた。また、臓器老化時計を設計し、老化を加速させる疾患特異的な変動が脳と末梢臓器において生じることを明らかにした。これらの知見は、異なる病態が臓器特異的な加齢と関連することを示唆している。さらにAPOE遺伝型に着目したプロテオーム解析により、プロテオシスと脂質輸送に関連するAPOE ε4シグニチャーが疾患非依存的に認められることを明らかにしている。
特筆すべき点として、これらのプロテオミクスデータは、49種類以上の臨床パラメーターが附属しており、GNPC以外の研究者がデータを活用することができる。データシェアリングとオープンサイエンスを通じて、認知症を含む神経変性疾患研究が本研究により加速することが期待される。
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