202616
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【Science Alert】インフルエンサーによる健康アドバイスのリスクをどう管理する?

インフルエンサーによる健康アドバイスのリスクをどう管理する?

SNSのインフルエンサーが健康に関するコンテンツをシェアすることは珍しくないが、国際的な研究者らは、不正確または偏った(inaccurate or biased)アドバイスによる害を軽減するために、プラットフォームと政府が協力する必要があると報告した。研究チームは、ヘルス・コミュニケーションにおける人気SNSアカウントの影響力増大を分析し、インフルエンサーが誤情報を拡散してしまうリスク要因として、「医学的専門知(expertise)の欠如」、「産業界(industry)からの影響」、「自分の製品を売りたいという欲求」、「個人的見解によるバイアス」の4点を挙げた。リスク軽減のためには、効果的な規制、インフルエンサーの説明責任、ターゲットを絞った教育、質の高い情報へのアクセスなどの戦略が必要だと述べている。一方で、医療専門家がオンライン上の誤情報を正したり、スティグマ(偏見)のある病状を持つ患者同士がコミュニティを作ったりするなど、一部のインフルエンサーが健康情報の共有において肯定的な役割を果たしていることも認めている。

【掲載誌】BMJ
【掲載日】12月4日
【論文リンク】https://www.bmj.com/content/391/bmj-2025-086061

高橋由光 京都大学大学院医学研究科 特定教授

SNS上の誤情報などに対応するためには、プラットフォーマーと政府それぞれの役割が重要だという本論文の指摘には強く同意できる。誤情報(misinformation)・偽情報(disinformation)などの拡散による混乱(インフォデミック)は、医療・健康情報の分野では特に深刻な問題を引き起こすことがある。例えばワクチンに対する否定的な情報は、それらを推奨する情報よりも高く評価される傾向にあるなど、受け手のリテラシー、情報メディア環境の問題も見逃せない。論文で述べられているように、「一つの方法だけ」では解決は困難である。オーストラリアで子どものSNS利用が法的に規制される動きなどもあるが、そうした動向にも注意を払いながら、政府(法制度)、メディア、教育などそれぞれのセクションで重層的な対策を行うことが不可欠である。国内でもすでに、情報流通プラットフォーム対処法が制定され、民間メディアにおける自主的なフェイクニュース対策なども見られる。論文では、単に間違っている情報である誤情報に言及されている一方、偽情報(意図的に作られた虚偽情報)への言及が少ないことが気になった。問題を引き起こしている情報の類型によって、求められる対策の内容やアプローチが異なる点についても、あらためて指摘しておく必要がある。

北澤 京子 医療ジャーナリスト、『いろんな健康・医療の「情報」に惑わされないための31のヒント』(時事通信社、2025)著者

健康や医療に関する情報は、まずそれが正確であり、信頼できることが重要です。本論文で著者らは、ソーシャルメディアのインフルエンサーが発信する健康や医療に関するアドバイスの信頼(の欠如)について論じています。

著者らはインフルエンサーにありがちなバイアスを4種類に分類した上で、問題のあるアドバイスと起こり得る健康上の害を具体的に挙げており、どれも興味深いです。こうしたバイアスが生じる背景には、ソーシャルメディア特有のアテンション・エコノミー(人々の注目に経済的価値があるとする考え方)やステルスマーケティング(広告宣伝とわからないように行う販促行為)の問題があり、日本でも状況は同じです。

では、どうすればよいのか。著者らは、ファクトチェック機関への支援やインフルエンサー自身への教育訓練など、考えられる対策を挙げています。しかし、表現の自由との兼ね合いもあり、著者ら自身も認めているように、こうすればよい、といううまい方法があるわけではありません。
今できることとして、まずは情報の受け手、つまり私たち自身が、インフルエンサーのアドバイスを鵜のみにせず、いったん立ち止まって吟味する習慣を付けること、そして、自分の内にもバイアスがあるかもしれないと自覚することではないでしょうか。

髙良 幸哉 筑波大学図書館情報メディア系 助教

現在、SNSは主要な情報取得ツールとなり、インフルエンサーによる情報拡散の社会的影響力は極めて大きい。しかし、医療誤情報や不確実な健康情報の拡散は、受け手が適切な医療を受ける機会を阻害し、医薬品等の不適切な使用を招く健康リスクに加え、高額な未承認機器の購入といった消費者リスクを惹起する懸念がある。

本研究は、インフルエンサーが健康情報を発信する際の構造的なバイアス(専門知識の欠如、業界の影響、経済的利益、個人的信念)を分析し、健康リスク軽減策について関連文献を調査・分析したものである。論文では、政府、プラットフォーム、インフルエンサーといった社会的アクターによる行動の必要性を示した上で、単一の解決策ではなく、多層的かつ複合的な対応の不可欠性を提示している。

これは、国内のネット上の健康情報規制を検討する上で極めて示唆に富む。現在、我が国には健康誤情報に特化した規制法はなく、プラットフォームの自主的な取り組みや、薬機法、健康増進法、景表法といった個別の表示(広告)規制による「ソフトロー」を中心とした対応に留まっている。多国間での議論やプラットフォームへの透明性要求を含む本論文の知見は、今後の日本の法整備や指針策定において参考となる。

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