2026119
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【海外Science Media Centre:Expert Reaction -専門家コメント-】肥満治療薬中止後の体重再増加についてのシステマティックレビューとメタ解析

肥満治療薬中止後の体重再増加、長期管理の重要性を示す分析

肥満治療薬の使用を中止した後に体重がどの程度再増加するのかについて、国際的な研究チームが既存研究を統合的に分析したシステマティックレビューおよびメタ解析が報告された。本研究では、薬物療法を中止すると体重が再増加し、体重減少に伴って改善していた心代謝リスク指標も時間とともに悪化するという一貫した傾向が示された。肥満が慢性かつ再発性の疾患であることを踏まえ、薬物治療の位置づけや中止後の支援、長期的な管理戦略の重要性が改めて問われている。

【掲載誌】BMJ
【掲載日】2026年1月7日
【論文リンク】https://www.bmj.com/content/392/bmj-2025-085304h

Prof Tricia Tan, Professor of Metabolic Medicine, Diabetes and Endocrinology, Imperial College London / Imperial College Healthcare NHS Trust

本論文は、肥満治療薬の投与を適切に開始することの重要性、そして患者に対して、以下の点を十分に説明する必要性を強調しています。
1. 肥満およびそれに伴う代謝性疾患は、慢性的で再発を繰り返す疾患であること
2. 治療は継続的かつ長期的に行う必要があること
3. 降圧剤を開始する場合と同様に、基本的には生涯にわたる治療であるという認識が必要であり、ただし用量は患者の状態に応じて調整され得ること
4. 糖尿病治療を開始する場合と同様に、期限を定めない治療であること

一方で、肥満治療薬中止後の体重再増加を防ぐには、適切な運動が重要であることを示すエビデンスが増えているにもかかわらず、本研究ではこの点が十分に議論されていません。肥満治療薬中止後の支援の位置づけを、たった一文で片付けている点は問題です。これは、「行動療法による体重管理プログラム後の体重再増加は、肥満治療薬中止後よりも遅い」という同論文の結論とも整合していません。

また、本論文は、肥満治療薬中止後の体重再増加が行動療法プログラム後よりも速いことを問題として提示しているようにも読めますが、行動療法による体重管理プログラムは、そもそも心血管疾患を実質的に改善するほどの十分な減量をもたらさないことが多い実情です。一方で、肥満治療薬による治療については、心血管疾患を改善するエビデンスがすでに存在しています。根本的に、肥満治療薬は肥満症患者の健康を改善するうえで臨床的に有効であり、費用対効果にも優れていると評価されています。

肥満管理は、国家的な長期戦略として取り組まれるべき課題です。そこには、GLP-1作動薬だけでなく、関連する生活習慣病に対する治療、さらに(依然として最も長期的な減量効果をもたらす)減量手術という選択肢も統合されるべきです。肥満管理は、長期的な健康に大きく寄与するだけでなく、人々が最良の人生を送れるようにすることで経済的利益も生み出す強力な要素として認識されるべきです。

Prof John Wilding, Professor of Medicine in the Department of Cardiovascular and Metabolic Medicine & Honorary Consultant Physician, University of Liverpool

本論文は、肥満治療薬による治療を中止した後の体重再増加に関する利用可能なデータを包括的に解析したものです(なお、私はセマグルチドを用いたSTEP 1延長試験の主任著者であり、この問いを扱った他のいくつかの試験の著者でもあります)。

本解析のデータの多くは、現在では使用されていない旧世代の薬剤に関するものですが、それでもなお、現在、主に使用される新しい薬剤にも当てはまる妥当な結果であると考えています。この結果は驚くものではありません。肥満は慢性疾患であり、治療を中止すれば多くの場合、再発します。糖尿病や高血圧、高コレステロール血症といった他の慢性疾患でも、治療をやめれば治療効果の持続は期待できません。つまり、肥満だけが例外であると考える科学的理由はないのです。

糖尿病に関する研究や、糖尿病のない人を対象としたセマグルチドのSELECT試験から、心血管疾患リスクの高い人では、GLP-1系薬剤を長期に使用することで、心筋梗塞や脳卒中といった心血管イベントの発生リスクが低下すると分かっています(これらの研究は通常3~5年の薬剤投与期間で行われています)。したがって、これらの治療は、短期的な「即効性」を求めるものではなく、長期治療として位置づけられるべきです。

集中的な生活習慣介入後では、体重再増加が比較的、緩やかな傾向が見られました。ただし、解釈には注意が必要です。というのは、これらの試験に含まれる集団は、薬物療法の試験に含まれる集団とは異なる可能性が高いからです。いずれにしても、私は、治療効果を最大化するために、減量薬と並行して生活習慣への支援を行うことを推奨します。

Dr Marie Spreckley, Prevention of Diabetes and Related Metabolic Disorders in High Risk Groups, MRC Epidemiology Unit, University of Cambridge

このシステマティックレビューおよびメタ解析は、37件の研究・9,341人の参加者のデータを統合したもので、体重管理薬を中止すると体重が再増加し、心代謝リスク指標の改善効果も時間とともに弱まるという一貫したパターンを示しています。著者らは、治療中止後の平均的な体重再増加は月約0.4kgと推定しており、約1.7年で治療開始前の体重に戻ると予測しています。

プレスリリースは概ね本研究の結果を反映していますが、実測データとモデルによる予測を区別することが重要です。本解析にはさまざまな研究デザインが含まれており、多くの研究はバイアスリスクが低いとは言えません。新しいインクレチン系薬剤については、エビデンスの蓄積はまだ限定的で、長期的な結論は現時点のデータを超えた外挿に依存しています。

現実的な観点からは、本研究の結果は、肥満管理には通常、長期的な計画が必要であることを改めて示しています。薬物治療を中止した場合、多くの人は継続的な栄養・行動面の支援を必要とする可能性が高く、医療サービス側も体重再増加に伴って心代謝面の利益が低下し得ることを想定すべきです。

Dr Adam Collins, Associate Professor of Nutrition, University of Surrey

体重を減らすことではなく、減らした体重を維持するという、はるかに重要な課題に焦点を当てた、時宜を得た重要な論文です。体重のリバウンドは、あらゆる減量介入に共通して見られる問題であり、GLP-1作動薬を中止した人で一定の体重再増加が起こることは、ある意味で避けられないとも言えます。

さらに懸念されるのは、体重が元に戻るだけでなく、開始時よりも増えてしまう人がいる点です。もともと、それほど肥満ではない人が私費で薬を使用しているケースが多いことを考えると、問題は深刻です。

本論文による重要なメッセージは、GLP-1作動薬という肥満治療薬は体重を減らすこと自体を非常に容易にした一方で、体重維持をこれまで以上に大きな課題にした、ということです。今後、健全な食事・行動・生活習慣戦略が、個人レベルおよび公衆衛生レベルの双方でこれまで以上に重要になることを強く示しています。

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