志内 哲也 四国大学 生活科学部 健康栄養学科 教授:
視床下部のVMH(視床下部腹内側核)はこれまで満腹中枢として知られていた部位であり、かつ、脂肪細胞から分泌されるレプチンが作用することで交感神経を介して末梢組織の糖・脂肪酸代謝を活発にする代謝調節中枢である。本研究では運動トレーニングにより、VMHにおいて体重や熱産生を調節するSF-1ニューロンへの持続的な興奮性入力が増加することで、神経細胞膜電位が上昇し、VMHからのエネルギー代謝調節経路が常時活性化しやすい状態になる可能性が示されている。運動療法現場においてこの結果を取り入れた説明がなされれば、説得力の高い運動トレーニング啓発へのアプローチにもつながるだろう。
今後は、今回ターゲットとなったVMH SF-1ニューロンが運動トレーニングのどのような刺激により活性化するのか、エネルギー代謝の適応が交感神経系を介するのか、骨格筋における筋線維組成や遺伝子発現の変化は伴わないのか、また、SF-1ニューロン以外のVMHニューロンは関与しないのかなど、様々な追加検証をする必要があると考えられる。
とりわけ、運動中よりも運動直後のSF-1ニューロンの活性化がクリティカルである結果は、大変重要で、かつ、興味深い点である。運動による脳への影響は、近年注目されている研究領域であり、この研究をきっかけにさらなる発展が期待される。今回の実験ではトレッドミルを使った強制運動だったが、自発的運動でも効果は同様であろうか。また、持久系運動だけではなく、筋トレでも視床下部などの中枢適応が生じるのか、興味は尽きない。