2010121
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海外発サイエンス・アラート:鉱山爆発事故の捜索ロボット

これはScience Media Centre (NZ)によるサイエンス・アラート(11/23/2010)の翻訳です。

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Updated 101201:Ver.1.1

 

<SMC-NZ発 ホット・トピック>

「鉱山爆発事故の捜索ロボット」に対する専門家のコメント

 先週、ニュージーランド西海岸のパイクリバー炭鉱で起きた爆発事故では、捜索用に送り込まれたロボットが坑道内で故障するトラブルを起こしました。

 今回使用されたロボットは、カメラ4台を搭載した多目的ロボットで、映像を通じて地上のレスキュー隊に地底の状況を知らせることを期待されていました。しかし、ロボットは炭坑内に入って間もないところで停止してしまいました。

 サイエンス・メディア・センター・ニュージーランド(SMC-NZ)では、世界的な救助ロボットと鉱山工学の専門家たちに、鉱山の落盤事故における捜索・救助ロボットの使用について語ってもらいました。コメントは以下の通りです。

 

 

○ロビン・マーフィー教授

 

(テキサスA&M大学,コンピューターサイエンス&エンジニアリング)

  Dr. Robin Murphy,Raytheon Professor of Computer Science and Engineering, Texas A&M University

救助ロボットや人間とロボット関係についての研究分野を作り上げてきた先駆的な女性研究者。過去には同時多発テロ事件、ハリケーン・カトリナやユタ州鉱山破壊事故などの11以上の事故現場で使われて来た救助ロボットの専門家として経験を積んで来たベテラン。

 設計上、想定されていない環境や状況でロボットを使うのは非常に難しいと思います。我々は今も、地下鉱山の救助に必要なものは何なのかを学んでいる最中です。

 今回の環境は厳しかったと思います。視界が悪い上に地面は濡れていますし、気温は下がっている。これだけで「普通の」ロボットならばショートしやすい環境です。平地であっても、センサーが泥に覆われて無反応になったり、オペレータもミスを犯しやすい状態です。

 

 

○ショーン・D・デズーリオ准教授(アリゾナ大学,鉱業・地質工学部)

  Dr. Sean D. Dessureault, Associate Professor, Department of Mining and Geological Engineering

鉱山の自動化、自動化管理科学、鉱物経済やシュミレーション・データーベース管理の専門家。

 

 

<以下、マーフィー教授とデズーリオ准教授に対する一問一答>

 

質問1(SMC-NZ):過去にはロボットが鉱山事故で効果的に使われ、人を助けたことはありますか?

 

ショーン・デズーリオ准教授(SD): 過去には使われたことがありますが、効果的ではありませんでした。

 

ロビン・マーフィー教授(RM): ロボットが人を救い出したことはありませんが、状況を把握するためには良く利用されてきました。救助隊はどこへ行けば安全なのか、どういう所が危ないのかを知るために使われています。

 

 

質問2:鉱山内で働くロボットは存在しますか、それとも、たとえば爆弾処理用のロボットが使われることが多いのですか?

 

デズーリオほとんどの場合は他目的のロボットを利用しています。軍用ロボットや爆弾処理用ロボットを援用しています。(たとえば、Northrup Grumman社ANDROSロボット。これはアメリカ合衆国・鉱山安全健康管理局(Mining Safety and Health Administration, MSHA)も使用しているロボットです。パイクリバー事故の現場写真にも写っていました)

 

マーフィー:鉱山事故に当たる救助ロボットは一台存在します。これはユタ州で起きたクランデル・キャニオン鉱山崩壊事故で使われたロボットで、メテンガスが漏れていない坑道に繋がる穴から入りました。

 

 

質問3:このようなロボットの弱点は何ですか?地面に散らばっているゴミや石の上を越えていけるのですか?

 

デズーリオ:移動力は大きな問題です。最も大きな問題はロボットが有線操作であるということ、つまり常にワイヤーで接続されていることです。事故の後では、無線技術は地下では動作しませんし、ULF(極超長波)の無線は(ロボットが現場で収集した)遠隔測定法(テレメトリー)データを送信するには帯域幅が足りません。

また事故後には換気システムが止まることが多いため、炭鉱の坑道内には爆発しやすいガスが滞留し、爆発の恐れがあります。ロボットは電気を通じて動くため、熱を介して、あるいは小さな火花や静電気で二次爆発を引き起こす可能性があるのです。米国では地下炭鉱に入るすべての電子は鉱業安全管理から評価された上で使われています。

 ですから、技術的な弱点を挙げるならば、次の様なものになります:

  • ロボットと操縦者の間のコミュニケーション
  • 爆発を引き起こす可能性のある電子機材の使用
  • 石や機材などの障害物が地面に落ちていても十分な移動力を持っているロボット。また、ワイヤーで接続されているロボットの移動距離は限られていること
  • 現在はまだ、「効率的に人を見つけ出すセンサー」を搭載したロボットは開発されていないこと

 

マーフィー:3種類の救助ロボットの中から、どれが使われるのかによります。たとえば、地上からの出入りだと爆弾処理用のロボットは有効ですが、このロボットは大きく重いため、狭い隙間や試錐孔(地面に垂直に空けた穴。シャフト)からの出入りは不可能です。メタンガスが多い環境の中でも爆弾処理ロボットは安全に動作するように作られていますが、このために大きく、重いものになってしまっているために機動力が落ちます。さらにロボットを操縦するためのオペレータ・インターフェイスも使いにくいことは、全てのロボットに共通した問題です。

 

 

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